自己破産で退職金は資産扱い!換価処分対象外となる退職金はある?会社にバレず退職金見込額証明書を取得する方法も解説

自己破産 退職金

自己破産を検討中なのですが、退職金が差押え対象になると聞いて、悩んでいます。仕事は今後も続けていこうと思っているので、自己破産するために退職するのはどうしても避けたいです。

確かに退職金見込額の1/4もしくは1/8は、自己破産の際に換価処分の対象になります。しかし、実際には退職を強制されることはなく、換価処分対象となる金額と同額を裁判所に納めることで回収が完了したとみなしてもらえる場合がほとんどです。

そうなのですね、安心しました。でも、退職金の1/8というとかなりの金額です。一括で払うのはとても無理です。

裁判所によって方針に違いがあり絶対とはいえませんが、分割払いを認めてくれる場合が多いので、安心してください。不安な場合は弁護士に相談し、具体的なアドバイスをもらうとよいでしょう。

自己破産をすると、借金の支払いが帳消しになる代わりに、一部の資産は換価処分対象となります。

では、退職時に受け取る退職金はどうなるのでしょうか?

結論からいえば、自己破産した場合、退職金の一部もしくは全部は資産とみなされ、換価処分対象となります。

しかし、退職金が出るから会社を退職しなければならないということはなく、換価処分対象額と同額を裁判所に納めることで回収が完了したとみなしてもらうのが一般的です。

また、裁判所への支払も一括ではなく、分割払いや一部免除が認められる場合もあります。

ちなみに、自己破産時には退職金見込額証明書が必要となりますが、会社に発行してもらうのが難しい場合、退職金規程が記載された就業規則などで代用できる場合もあります。

申立てをする裁判所によって取扱いが異なるため、気になる人は弁護士に相談するとよいでしょう。

この記事でわかること
  • 自己破産した場合、退職金の一部もしくは全部は資産とみなされ、換価処分対象となる。
  • 自己破産する際に退職金の1/8が用意できない場合、裁判所によっては分割払いや一部免除が認められる場合もある。
  • 退職金見込額証明書が用意できない場合、退職金規程に関する記載があれば「就業規則」などで代用できる場合もある。

自己破産すると退職金の一部もしくは全部が換価処分対象になる

「自己破産すると、将来退職金が受け取れなくなるのではないか?」と不安に思う人もいるでしょう。

結論からいえば、退職金は自己破産の際、一部または全部が資産とみなされ、換価処分の対象となります。

自己破産をした場合、債務者の資産は基本的に破産財団自己破産において管財人に換価処分される資産のこと。となり換価処分されますが、自由財産に該当する資産は処分しなくてもよいとされています。

※自由財産・・・破産財団に組み入れられず、自己破産において換価処分しなくてよい資産のこと。法律で定められている自由財産には、以下のようなものがある。
  1. 新得財産(破産手続開始決定後に取得した財産)
  2. 差押禁止財産(法律上差押えが禁止されている財産)
  3. 99万円以下の現金

退職金は、既に退職済みでまだ退職金を受け取っていない場合や、まだ退職していない場合でも、退職金債権退職金を請求する権利。が資産として扱われます。

換価処分対象となる範囲は、退職金見込額の1/4となるのが一般的ですが、実際には状況により異なります。

次の項目から、状況別に換価処分対象となる範囲について詳しくお伝えします。

既に退職金受取済みなら、退職金全額が現金・預貯金として換価処分対象になる

破産手続開始決定前に受け取った退職金は、その金銭が現金として手元に保管してあるか、預貯金として口座に保管してあれば、その残高によって換価処分対象になる恐れもあります。

  • 現金の場合、99万円を超えている
  • 口座残高の場合、合計が20万円を超えている

上記のような場合は、退職金かどうかに関係なく基準額との差額が換価処分対象になります。

退職金受取前なら「自己破産時点での退職金見込額の一部」が換価処分対象になる

破産手続開始決定時点でまだ退職金を受け取っていない場合は、自己破産時点での退職金見込額の1/4もしくは1/8が換価処分対象になります。

1/4になる場合と1/8になる場合の違いは「退職金がもらえることが確定しているか?」が基準になっています。

本来なら、差押禁止財産となるのは退職金の3/4なので、1/4は換価処分対象となります。

しかし、確実にもらえるか分からないものに対して1/4を換価処分対象としてしまうと、破産者に不当な負担を与えてしまう恐れもあります。

そのため、退職金がもらえることが確定していないと判断されれば、半分の1/8でよいとなる場合があるのです。

どのような状況で退職金見込額の換価処分対象が1/8もしくは1/4となるのか、後の項目で詳しくお伝えします。

退職時期が未定なら、見込額の1/8が換価処分対象

直近で退職金を受け取る予定がない場合、退職金見込額の1/8が換価処分対象となります。

ちなみに、基準となる退職金の金額は、破産手続開始決定時点で退職した場合の退職金の金額です。

たとえば、退職金見込額が800万円の場合、換価処分の対象となるのは100万円です。

「自己破産中に退職予定」「退職済みで退職金受取前」なら、見込額の1/4が換価処分対象

以下のような場合には、退職金がもらえることがほぼ確実なので、退職金見込額の1/4が換価処分対象となります。

  • 自己破産中に退職することが決まっている場合
  • 既に退職しているが、破産手続開始決定時点でまだ退職金を受け取っていない場合

たとえば、退職金見込額が800万円の場合、換価処分の対象となるのは200万円です。

自己破産の際に換価処分対象額と同額を裁判所に納める必要がある

自己破産時に退職金見込額の一部が換価処分対象になると聞いて「退職金が出る場合は、会社を退職しなければならないのでは?」と思う人もいるかもしれません。

しかし本来、借金を帳消しにして生活を立て直す目的で自己破産をするのに、自己破産をした結果、職を失い生活が立ち行かなくなるのでは元も子もありません。

実際には退職して退職金を支払に充てるのではなく、換価処分対象となる金額と同額を裁判所に納めることで回収が完了したとみなしてもらうのが一般的です。

換価処分対象額が20万円未満なら裁判所に納める必要がない可能性が高い

自己破産した際に換価処分されるのは、一点で20万円以上価値のある資産です。

逆にいえば、価値が20万円未満の資産は換価処分されず手元に残せる可能性があります。

ここでいう価値とは、自己破産時点での売却価格などのことを指し、退職金の場合はその1/8(もしくは1/4)の金額が20万円以上かどうかで判断します。

たとえば、自己破産時点での退職金見込額の1/8が換価処分対象となる場合は、退職金見込額が160万円未満なら換価処分対象外となる可能性が高いです。

また、自己破産時点での退職金見込額の1/4が換価処分対象となる場合は、退職金見込額が80万円未満なら換価処分対象外となる可能性が高いといえます。

自己破産しても換価処分対象外となる退職金の種類

退職金として受け取るお金の中でも、以下に該当するものは自己破産しても換価処分対象になりません。

  • 共済制度による退職金
  • 企業年金や確定拠出年金

次の項目から、それぞれ詳しく紹介していきます。

共済制度による退職金

共済制度による退職金には、以下のようなものがあります。

  • 中小企業退職共済制度による退職金
  • 小規模企業共済制度による退職金

中小企業退職共済制度は、自社では退職金の支払いが難しい中小企業のための退職金制度です。

また、小規模企業共済制度は、中小機構が運営する経営者のための退職金制度です。

これらは自己破産上の退職金とは異なり、自由財産とされているため換価処分対象になりません。

また、建退共(建設業を対象にした退職金制度)も中小企業退職共済制度による退職金に該当するため、換価処分対象外です。

企業年金や確定拠出年金

企業年金や確定拠出年金を退職金として導入している会社もあります。

企業年金や確定拠出年金には、以下のような種類があります。

  • 確定給付企業年金
  • 厚生年金基金
  • 企業型確定拠出年金
  • 個人型確定拠出年金

上記のような企業年金や確定拠出年金は、全額が差押禁止財産のため換価処分の対象外です。

しかし、確定拠出年金の中には、差押禁止財産に該当せず換価処分の対象となるものもあるので注意しましょう。

退職金と同様、年金も種類によっては自己破産の際に換価処分対象となる場合があります。気になる人は以下の記事を参考にしてください。

会社に自己破産のことを知られず退職金見込額証明書を取得する方法

自己破産する際、裁判所に提出する書類として退職金見込額証明書が必要になります。

この時多くの人が不安に思うのが「どうすれば会社の人に自己破産のことを知られず、退職金見込額証明書を発行してもらえるのか?」という点でしょう。

次の項目から、会社の人に自己破産のことを知られず退職金見込額証明書を発行してもらう方法について、いくつか例を挙げますので参考にしてください。

「住宅ローンの審査に必要」と伝える

会社に申請する際「住宅ローンを組むために、退職金見込額証明書が必要。」と伝えて発行してもらう方法があります。

実際に、住宅ローンの審査などの際、退職金見込額証明書を求められるケースもあるため信用してくれる場合が多いです。

ただし、会社によっては証拠(銀行から求められる必要書類の欄に退職金見込額証明書の記載があるもの)を出さなければ発行できないなどと言われてしまうケースもあるようです。

どうしても会社から発行してもらうのが難しい場合、代わりとなる書類を自分で用意する方法もあります。

次の項目で詳しくお伝えします。

退職金規程に関する記載があれば「就業規則」などで代用できる場合もある

勤務先の就業規則に退職金規程に関する記載があれば、退職金見込額証明書の代わりとして使用できる場合もあります。

まず、勤務先の就業規則及び退職金規程を入手してください。

退職金規程に具体的な計算方法が書いてあれば、それを基に自分で退職金の金額を計算しましょう。

裁判所に提出する際は、自分で計算した退職金の金額に、具体的な計算方法が分かる退職金規程のコピーを添えて提出します。

自分の場合、退職金見込額証明書を用意する必要があるかどうかについて、気になる人は弁護士に相談することをおすすめします。

自己破産する際に退職金見込額の1/8が用意できない場合の解決法

前述のとおり、自己破産する際には退職金見込額の1/8と同額を用意し、裁判所に納めなければなりません。

しかし、自己破産時点での退職金見込額がかなり高額で、1/8の金額がすぐには用意できない人もいるでしょう。

「もし退職金見込額の1/8が用意できない場合、会社を退職して退職金を支払いに充てるしかないのでは?」と不安に思う人もいるかもしれません。

次の項目から、自己破産する際に退職金見込額の1/8を用意できる見込がない場合、会社を退職せずに解決する方法を紹介しますので、参考にしてください。

裁判所によっては分割払いや一部免除が認められる場合もある

裁判所によって方針に違いがあるため一概にはいえませんが、退職金見込額の1/8の支払いを一括ではなく、分割払いにしてくれる場合もあります。

また、自由財産の拡張が認められれば、退職金見込額の1/8を全額支払わなくて済む可能性もあります。

※自由財産の拡張・・・法律で定められている自由財産以外の資産について、裁判所の決定により自由財産として認められること。

99万円以下の現金が自由財産であることから、一般的に自由財産の拡張が認められる1つの目安は、99万円だといわれています。

つまり、その他の自由財産との合計額が99万円以内であれば、自由財産の拡張が認められる可能性は十分にあります。

たとえば、10万円の現金が自由財産として手元にあり、退職金見込額の1/8が100万円の人が自己破産するとします。

他に自由財産に該当するものを所持していなければ、89万円までは自由財産の拡張を認めてもらえる可能性があります。

つまり、裁判所に納める金額が100万円から89万円を除いた11万円で済む可能性があるのです。

ただし、実際に自由財産の拡張を認めてもらうには、その資産が破産者の生活に必要不可欠だと証明する必要があります。

自由財産の拡張を認めてもらえるかどうか、気になる場合は弁護士に相談するとよいでしょう。

任意整理や個人再生に方針変更する

自己破産は任意整理や個人再生と違い、借金返済義務が一切なくなるため、手続き後の金銭的負担が最も軽くなる手続きです。

しかし、退職金見込額が高額な場合、手続き時に必要となる金額が大きくなるというデメリットもあります。

そのため、直近で大きな金額を用意するのが難しい場合は、任意整理や個人再生など他の債務整理手続きも検討してみてはいかがでしょうか?

任意整理は、将来利息をカットや減額し、月返済額を抑えて3~5年で完済を目指す方法です。

残債額や交渉相手の債権者によっては、月返済額が1/2~1/3に減る可能性もあります。

また、個人再生は借金を約1/5~1/10に圧縮し、3~5年で完済を目指す方法です。

残債額自体を減らせるので、月返済額や返済期間を大幅に縮小できる可能性があります。

実際に任意整理や個人再生をした時、どれくらい負担が減るのか?気になる人は以下の「借金減額診断チェッカー」を利用しましょう。大まかな借金額を入力するだけで簡単に減額金額がわかります。

また、弁護士に無料で直接債務整理の相談をすることも可能です。ぜひご活用ください。

まとめ

自己破産した場合、退職金の一部もしくは全部は資産とみなされ、換価処分対象となります。

しかし、退職金が出るから会社を退職しなければならないわけではなく、また退職金の種類によっては換価処分対象外となる場合もあります。

「換価処分対象額を裁判所に支払う際、分割払いが認められるのか?」

「退職金見込額証明書の代わりに、退職金規程が記載された就業規則が使えるのか?」

これらについては、申立をする裁判所によって取扱いが異なるため、気になる人は弁護士に相談するとよいでしょう。

自己破産の関連記事