自己破産してもパスポートは取れる?海外旅行など制限を受けることはあるのか?

自己破産すると持っているパスポートが取り上げられ、新たに取得もできないと聞きましたが、本当ですか?

パスポート取得が制限される事項は、パスポート発券を定める「旅券法」に定められていますが、犯罪を犯した人など極一部に限定されています。自己破産は犯罪ではなく、制限事項にもなっていないため、取得や更新にはなんの問題もありません。

パスポートの取得ができるということは、海外旅行に行くこともできるということですか?

原則的には、海外旅行に行くのも制限されていません。ただ、手続き中は長期の移動が制限され、裁判所の許可が必要になります。

なるほど。では許可が貰えれば、海外旅行も問題ないということですね!

そのとおりです。しかし、制限がないとはいえ、自己破産は返済が難しい人の救済制度である趣旨を踏まえると慎重に判断すべきです。費用も相応にかかるはずなので、心証が悪くなって免責されないようなことがあると本末転倒ですよ。

「自己破産するとパスポートが失効する」「自己破産したら海外旅行にはいけなくなる」

自己破産について調べている方の中には、このような情報を見たという人もいるのではないでしょうか。しかし、この情報は正確ではありません。

原則的に自己破産がパスポートの発券に影響することはありません。海外旅行についても、原則的には問題ありませんが、手続きの進行度合いによっては、注意すべき点もあります。

対応を謝ると、最悪、免責が認められない可能性もあります。

そこで今回は、自己破産した場合のパスポートや海外旅行の取り扱いと注意点について、詳しく解説していきます。出張など海外への渡航について気になる方はぜひ確認してみてください。

この記事でわかること
  • 自己破産してもパスポートの発券、更新は問題なく可能
  • 自己破産しても海外旅行は可能だが、自己破産手続きの進行段階によって注意が必要
  • 自己破産手続き中は、長期の旅行や引っ越しが制限されているため、海外旅行には裁判所の許可を得る必要がある
  • 自己破産後は海外旅行に制限はないが、クレジットカードは利用できなくなるため、代替手段を用意しておく

自己破産してもパスポート取得は問題なくできる

自己破産するとパスポートが取得できないのではと思われている方も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、自己破産してもパスポート取得にはなんの問題もありません。もちろん、既に取得しているパスポートも失効することはありません。

自己破産はパスポート発行の制限事項には含まれていない

自己破産とパスポート発行には、実はまったく関連性はありません。

パスポートの発給は「旅券法」という法律で定められており、発給が制限されるものは以下と規定されています。

  • 渡航先の法律により入国が認められない者
  • 死刑、懲役2年以上の刑にあたる犯罪で逮捕、勾留されている者
  • 禁固刑以上の刑に処され、執行中または執行猶予中の者
  • 旅券の偽造、譲渡など旅券法に定められた罰則に処せられた者
  • 外務大臣が国益または公安を害する恐れがあると認めた者

出典:e-GOV法令検索 旅券法第十三条(https://elaws.e-gov.go.jp)

上記の通り、パスポートの発給を制限されるのは犯罪を犯し、刑罰を受けるなどといった、いわゆる反社会的行為を行う人が発給制限の対象です。

自己破産などの債務整理はもちろん犯罪行為ではありませんので、パスポートの取得を制限されることはありません。

自己破産すると海外旅行にはいけないのか?

次に自己破産と海外旅行との関係性についてです。

「自己破産すると海外旅行にいけなくなる。」という情報もありますが、これは半分正解で半分間違いです。

自己破産したとしても、海外旅行に行くことは原則可能です。ただし、自己破産の手続きの段階によっては、注意すべき点がありますので、それらも踏まえ、自己破産の段階ごとに解説します。

自己破産申立前は制限されないが弁護士に相談を

自己破産申立前の段階であれば、海外旅行に行くことは可能です。しかし、念の為事前に弁護士に相談しておくことをおすすめします。

なぜ、相談したほうがいいかというとこれは自己破産の制度の趣旨に起因します。

自己破産は、借金の返済が困難になった人に対して、借金の返済を免除し、経済的更生を図る救済制度です。この制度は、借金を免除するわけですから債権者側から見ると損失を受ける制度でもあります。

そのため、自己破産手続きでは、申立人本人に本当に返済能力がないのか、免責が妥当かについて調査します。

海外旅行に行くということは、渡航費や現地での経費などある程度のお金が必要となるはずですから、借金の返済ができない人が、海外旅行に行くことに違和感を感じる可能性も否定できません。

海外旅行に行くだけの収入が確保できているのであれば、結果として、免責が認められないとされる可能性もないわけではありません。

海外旅行に行ったことで、自己破産を認められないとなれば本末転倒です。そのような自体を避けるため、事前に問題がないのかを弁護士に確認しておくようにしてください。

自己破産手続き中の海外旅行は裁判所の許可が必要

自己破産手続き中は、裁判所の許可が必要な場合があります。

管財事件では海外旅行を含む長期の旅行や引っ越しが制限される

「管財事件(少額管財)」として自己破産を手続き中の場合、長期の旅行や引っ越しが制限されるため、海外旅行には裁判所の許可が必要です。

自己破産には、大きく分けて「管財事件(少額管財)」「同時廃止」の2つの種類の手続きがあります。

「同時廃止」の場合は、手続開始決定とともに手続きが終了するため、特に問題がありません。

注意が必要なのは、「管財事件(少額管財)」の場合です。

管財事件の場合、手続中は居住地を制限されます。この場合の居住地とは、住所地(住んでいる場所)ではなく、生活圏という感じで、住所地よりも少し広い範囲と考えてください。

手続中は財産や借金の状況などに関して裁判所や破産管財人による調査が行われており、申立人とはいつでも連絡を取れるようにしておく必要があります。

また、自己破産手続きは、申立人の財産を処分・換価し、債権者に配当することを目的としています。そのため、長期の旅行や引っ越しなどによる逃亡や、財産の隠匿を防ぐ必要があります。

これらの理由から、自己破産手続き中は長期の旅行や引っ越しなどを原則的に制限しています。海外旅行の場合は、多くの場合旅行期間は長期に渡るため、制限の対象になるというわけです。

裁判所の許可を得られれば問題なく旅行可能

海外旅行は上記の通り制限されますが、完全に不可能になるわけではなく、裁判所の許可を得ることで海外旅行は可能です。

上記の通り、海外旅行を制限しているのは、適正な自己破産手続きを保護することが目的です。手続きを害さないことが明らかな場合は、裁判所から許可を得ることで旅行することができるでしょう。

例えば、家族の結婚式や出張など、止むを得ない理由での渡航は認められるケースが大半です。

ただし、自己破産申立前と同様に行楽などが目的の場合は許可が出ない可能性もあります。

自己破産では、自身の財産は処分・換価され、債権者に配当されます。当然、財産の中には現金も含まれています。

長期間、海外旅行に行くということは相応の費用も必要であり、場合によっては、本来債権者に配当されるべき財産を減らしてしまっている可能性があります。

裁判所の判断にもよりますが、これらを勘案し裁判所が許可を出さない可能性もあるでしょう。

いずれにしても、裁判所から許可を得る手続きは必ず必要です。問題ないからといって、許可を得ていなければ、最悪免責が認められない可能性もあるので、忘れず手続きするようにしてください。

自己破産の手続き期間が長くなる可能性も

長期間の海外旅行に行くことによって、免責を受けるまでの期間が長期化する可能性があることも認識しておきましょう。

自己破産手続きは、スムーズに進捗しても、おおよそ3~6ヶ月の期間が必要です。手続きの過程には裁判所との面談など、本人が出頭する必要のある手続きもあります。

裁判所から出頭を命じられた際に、海外旅行で出頭できなければ、それだけ免責許可までの期間が長くなってしまいます。

免責許可が降りるのが遅くなることで、ブラックリスト期間なども後ろ倒しされ、生活に影響を及ぼす期間も長くなります。

自己破産の手続きをするのであれば、できるだけ早く手続きを完了するに越したことはありませんので、これらの影響も踏まえた上で判断するといいでしょう。

自己破産後は自由に海外旅行可能

自己破産後は手続き中の制限も解除されるため、海外旅行も自由に行くことが可能です。

ただし、自己破産で借金が免責されるとさまざまな制限が課されます。中には、海外旅行をする上で不便なことも出てきますので、事前に確認し準備するようにしましょう。

クレジットカードが作れないため、不便はある

自己破産後は、もともと持っていたクレジットカードは使用できなくなり、クレジットカードの新規作成もできないため、不便を強いられることもあるでしょう。

自己破産後は、クレジットカードの新規作成は5~10年の間、できなくなります。

クレジットカード会社は、新規作成や継続などの審査、定期的な状況確認に個人信用情報を利用しています。自己破産すると、個人信用情報に自己破産したという事故情報が掲載されます。

この事故情報は個人信用情報会社により異なるものの、5~10年間は消えません。

事故情報が掲載されると、基本的にはクレジットカードの審査には通らないため、クレジットカードは利用できないと考えておきましょう。

海外旅行などでは、防犯上の観点も含めクレジットカードを利用する方も多いですが、利用できないため代替手段を検討しておく必要があるでしょう。

アメリカへの渡航ではESTA手数料の支払に注意

アメリカに渡航する場合は特に注意が必要です。

アメリカに渡航する際、入国時に「ESTA」という入国申請が必要です。この入国申請の手数料の支払い方法はクレジットカードに限定されており、対象となるのはマスター、VISA、アメックス、JCBです。

クレジットカードがない場合は、後でご紹介するデビットカードなどの代替手段が必要になるので、事前に準備しておきましょう。

クレジットカードの代替手段

ここでは、クレジットカードの代替手段についてご紹介します。

デビットカード

デビットカードは、利用と同時に登録している銀行口座から代金が引き落とされるカードです。口座残高が不足している場合は利用できなくなっているので、借入ではなく現金と同様の扱いです。

作成の際の審査もありませんので、自己破産して個人信用情報に事故情報が掲載されても問題なく作成できます。

「口座残高を用意しておく必要がある」「分割払いはできない」以外の部分では通常のクレジットカードと同じように利用可能です。

家族カード

家族カードを作成することも可能です。

クレジットカード会社では、家族カードを作れるようになっています。家族カードであれば、審査はあくまで契約元の信用情報に基づき行われます。

例えば、配偶者が持っているクレジットカードで家族カードを作成する場合、審査は配偶者の信用情報が対象のため、自己破産していた場合でも作成することが可能です。

もちろん、家族カードも通常のクレジットカードですので、自分の名義のカードと同じように利用可能です。

ただし、使いすぎなどでトラブルとならないよう、家族としっかり話し合った上で作成することをおすすめします。

プリペイドカード

プリペイドカードは、事前にカードに現金をチャージすることで利用可能なカードです。

Suicaなどの交通系ICカードが代表的です。それ以外にも、最近ではインターネットショッピングなどでもクレジットカードのように利用できるVANDLEカードなどのサービスもあります。

利用できるのはチャージしている範囲のみで、審査も必要ありません。

バンドルカードなどについては、以下の記事で詳しくご紹介していますので参考にしてください。
【関連記事】債務整理をしても作れるバンドルカードとは?バンドルカード以外に利用できる後払い決済も紹介

まとめ

たとえ、自己破産しても、パスポートの発券・更新にはなんの問題もありません。

パスポートの発券が制限されているのは、あくまで犯罪などの反社会的な行為を行ったものであり、国が認めている救済制度である自己破産によって制限されません。

ただし、海外旅行については慎重な対応が求められます。

自己破産手続き中は、海外旅行を含む長期の旅行や引っ越しは制限されており、裁判所の許可を得る必要があることは認識しておきましょう。

また、自己破産の申立前においても、自己破産の趣旨を踏まえると、慎重に対応するべきです。

仕事上、どうしても海外渡航が必要な場合など、海外渡航が想定される場合は事前に弁護士に確認し、自己破産手続き自体に支障がないようにしておくことをおすすめします。

自己破産の関連記事