【任意整理のメリット・デメリット】手軽な費用で財産処分されず減額可能!元本が残ることには注意


先生、借金の返済が厳しくなってきたから、生活への影響が少ないって聞く任意整理を検討しているんですけど、メリット・デメリットにはどんなものがあるんですか?


任意整理ですね。まず、裁判所を介さずに行う手続きであるため、自己破産や個人再生などの債務整理と比較すると費用が安いのが特徴です。また、財産処分を受けなかったり、他の手続きと違って裁判所からの郵便物が送られてくることもないので、家族にバレるにくいこともメリットになるでしょう。あとは、自己破産のように職業制限がないこともメリットです。
そうなんですね!では、デメリットにはどんなものがあるんですか?


任意整理をすることで、信用情報期間に事故情報が登録されてしまうから、今後5年間はクレジットカードが使えなくなります。また、他の手続きは大幅な借金減額ができるのに比べ、任意整理で減額できるのは将来利息分だけ。毎月の支払いが少なくなるとはいえ、支払い能力があることを前提としている手続きということは覚えておいたほうがいいでしょう。
わかりました。今回は任意整理のメリット・デメリットについて詳しく教えてください。

任意整理の大きな特徴は、やはり費用や手続きの手軽さでしょう。弁護士に任意整理を依頼する場合、1社あたりおおよそ4万円で手続きが可能です。また、自己破産や個人再生と違い、裁判所での手続きではなく、あくまで債権者(お金を貸す側)との手続きとなるので、かかる労力も低いです。
また、財産没収されないことも、魅力に感じる方は多いのではないでしょうか。
ただし、任意整理は自己破産や個人再生と違い、借金を大きく減額する手続きではありません。元本は3~5年かけて返済する必要があるため、そもそも返済能力がある人しか選べないことはデメリットとなるでしょう。また、債務整理をすることで信用情報機関に事故情報が登録され、向こう5年間はクレジットカードが使えなかったり、新しい借り入れができないことは他の債務整理手続きと一緒です。
この記事では、任意整理のメリット・デメリットについて詳しくお伝えしています。

- 任意整理は費用や手続きの手軽さ、そして財産没収されないなど、他の手続きと比べリスクが少ないことが特長
- ただし、借金の元本はそのまま残るなど、大きな減額は期待できないことがデメリット。また、将来的に返済を続ける人しか手続きを選べない。
- 任意整理を選ぶべき人は、まだ返済能力が残っており、債務整理によるリスクを最小限に抑えたい人。家族にバレる可能性も比較的少ないので、家族持ちにも向いている。また、財産没収を避けたい人にも任意整理はおすすめ。
手軽さとリスクの少なさが特長!任意整理のメリット6つ
任意整理とは、債務整理手続きの一種で、将来利息をカットし、毎月の返済額を減額できる手続きです。他の債務整理手続きには、自己破産や個人再生がありますが、これらの手続きと比べ、手続きにかかる手間、費用が手軽なことが任意整理のメリットと言えるでしょう。
具体的には、以下が任意整理のメリットとなります。
- 利息がカットされ、返済計画が立てやすくなる
- 支払督促がただちにストップする
- 財産を維持できる
- 手続きに手間がかからない
- 費用間が手軽
- 将来に対する不安が軽減される
利息がカットされ、返済計画が立てやすくなる
任意整理を行うことで、今まで支払っていた利息が将来に向かってカットされます。
そもそも、毎月返済している返済額は「利息」と「元金」に分かれていることをご存じでしょうか。利息とは、消費者金融等(借入先)に支払う手数料のようなもので、借入先や借入金額に応じてパーセンテージが決められています。
一方で「元金」とは、実際に借りたお金の部分のことをいいます。例えば、毎月1万円を返済していたとしても、1万円全額が支払い(元金)に充当されているわけではありませんよね。
借入先によって決められた手数料(利息)を差し引いた金額が、元金の返済額として充当されます。
そして「利息」は、借入金額が多ければ多いほど増えます。その結果、元金がなかなか減らず、いつまで経っても借金が完済できない状態に陥ってしまうのです。
しかし任意整理を行うことで、将来に向かって利息がカットされるため、「返済期間が短縮される」もしくは、「毎月の返済額が軽減される」ことになります。
いずれにせよ、総支払金額(実際に支払う総額)も減りますし、返済計画を立てやすくなります。
督促がただちにストップする
任意整理を行うということは、弁護士や司法書士に手続きを依頼することになると思いますが、弁護士や司法書士へ手続きを依頼すると、最短即日で支払督促がストップします。
これは、弁護士や司法書士が、「受任通知」という書類を債権者(お金を貸した側)に発送するからなのですが、債権者は受任通知を受け取ると、手続きを開始した債務者(お金を借りた側)に、貸金業法上連絡をしてはいけないことになっています。ですので、任意整理手続きを弁護士や司法書士に依頼することで、支払いが止められるというわけです。
返済が滞っていれば、毎日のように督促状や督促の電話が届き、嫌な気持ちになってしまう方もかなりいらっしゃいます。しかし、「〇〇法律事務所に相談をしています」と言うことで即日督促を止められる可能性が高いです。
財産を維持できる
任意整理は、自分の財産を処分する必要はありません。車や家など、財産を失うことなく債務整理を行えます。
例えば、他の債務整理のひとつである「自己破産」は借金をなくすことができますが、高価な財産をすべて手放さなければいけません。
一方で任意整理は財産を残しながら確実に借金を減らしていけるので、メリットに感じる方は多いでしょう。
手続きに手間がかからない
任意整理は「交渉」であるため、基本的に専門家へ依頼をします。そのため、自分で行う手続きは少なく、他の債務整理と比較しても、手間がかかりません。
基本的に、弁護士や司法書士などの専門家へ依頼をすれば、交渉から和解まで専門家が行ってくれます。そのため、債務者(お金を借りた側)が行うことはほぼありません。時間が取りにくい方であっても、手間をかけずに債務整理ができる点はメリットです。
ちなみに、任意整理はお金を貸し出す人(債権者)との交渉であり、お金を借りた人(債務者)個人で行うのは難しいので、弁護士等の専門家を通して行うのが一般的です。
費用感が手軽
また、任意整理は自己破産や個人再生と比べて費用感が手軽です。
具体的に言うと、任意整理の着手金は、整理する対象1社あたり4万円ほどが相場なのに対し、自己破産や個人再生は最低でも20万円以上の着手金がかかるでしょう。また、自己破産や個人再生は裁判所を通して行う手続きなので、別途予納金がかかります。個人再生や、処分できる財産をもってない自己破産の場合は1〜3万円、処分できる財産をもっている場合の自己破産の場合は20〜50万円の予納金が必要になります。
こうしてみると、任意整理はかなり手軽な費用感で手続きができることがわかるはずです。
将来に対する不安が軽減される
「毎月の返済額が減る」「返済計画が明確になる」たったこれだけのことで、前向きになれます。
多額の借金を抱えている人は特に、「いかにして借金を返済するか」「このままじゃヤバい…」と思っている方が多いです。
しかし、任意整理を行うことで、「現実的な返済計画」を立てられるため、将来のビジョンが見えやすくなります。結果、精神的な安定を得られることにも繋がるでしょう。
大きな減額はできないことがネック|任意整理のデメリット3つ
任意整理は、自己破産や個人再生に比べ、手軽でリスクが少ないことがメリットである反面、減額幅が小さいことはデメリットと言えるでしょう。
また、裁判所を通した手続きでもないため、債権者が交渉に応じてくれなければ、そもそも手続き自体が成立しません。
また、債務整理を行うことで、信用情報機関に事故情報が登録され、クレジットカードが使えなくなったり、新しい借り入れができなくなることも任意整理を行うデメリットです。
支払いが免除されるわけではない
任意整理を行ったところで借金額が0になるわけではありません。
任意整理とは将来の利息をカットし、月々の返済額を見直すことで返済期間を短縮したり、毎月の支払額が軽減されたりする債務整理の一種です。
そのため、任意整理では“利息”は免除されますが、元金部分については免除されませんので注意してください。
借金の元本自体を大きくカットしたい人は、自己破産や個人再生の検討を
「借金の元本を大きくカットしたい」もしくは「借金を0にしたい」という方は、個人再生や自己破産を検討してください。
借金を大幅に減額できる個人再生
個人再生の正式名称は「個人民事再生」であり、住宅等の財産を守りながらも借金を大幅に減額できる債務整理手続きです。
個人再生は借金が0になるわけではありませんが、借金を大幅に減額できるので、任意整理と比較しても大幅に元金をカットできます。
ただし、任意整理と異なり裁判所による手続きとなるため、最低でも20万円〜の弁護士費用がかかります。しかしながら、借金をそれ以上にカットできるのであれば、個人再生を行う価値は十分にあるでしょう。
借入額が膨らみすぎて、任意整理を行っても返済が厳しい方は、個人再生を検討してください。
借金をゼロにできる自己破産
一方で自己破産とは、裁判所から「支払い能力がない」と認められた人に限って行える債務整理手続きのひとつです。
自己破産を行うことで、高価な財産を売却し債権者に分配されてしまうため、マイホームや車は失います。一方で借金額は0になるため、人生のリスタートが可能です。
ただ保証人がいる債務の場合、自己破産を行うことで保証人に返済義務が移ります。債務整理の中でも、デメリットが1番大きいのも自己破産です。
自己破産の手続きを行う際は、デメリットをしっかりと把握した上で行ってください。
必ず応じてもらえるとも限らない
任意整理を依頼したからと言って、必ず応じてもらえるわけではありません。
任意整理は債務者(お金を借りた人)と債権者(お金を貸した人)の間に弁護士などの専門家が間に入り、“交渉”を行います。
他の債務整理である個人再生や自己破産とは異なり、裁判所を介さずに行うため、債権者に対する強制力がありません。そのため、任意整理に応じる・応じないは債権者に委ねられています。
信用情報に“異動情報”が記載される
任意整理を行うと信用情報に“異動情報”が掲載されてしまいます。
異動情報とは、支払い遅延や債務整理を行った際に記載されてしまう情報で、いわゆる「ブラックリスト」です。実際にブラックリストというものは存在していませんが、異動情報が記載されることを「ブラックリスト入り」と表現する方もいます。
異動情報が掲載されてしまうと、新たな借入やローン、クレジットカードの審査に通りにくくなってしまいます。絶対に審査に通らないわけではありませんが、ほぼ100%通らないと思ってください。
また、ローンが組めないということは、スマホの機種代金を分割払いできないという影響もあります。
信用情報機関に異動情報が載るデメリットをさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
原則5年以内に完済が可能であることが条件となる
任意整理の交渉が成立するためには、「原則3~5年以内に完済可能」であることが条件です。
返済金額のみならず、収入の安定性などもすべて考慮した上で判断されるので注意してください。自分が絶対に返済できると思っても、無理のある返済計画であれば交渉が成立しません。
また、無理のない返済計画を立てた結果、返済期間が5年を超えてしまうような場合(つまり収入に対して借金総額が多い場合)も交渉が成立しない可能性が高いでしょう。
そのため任意整理は、「原則5年以内に無理のない返済計画を立てられる人」がひとつの条件となっています。
返済の意思がある人であることも条件
任意整理を行う上で、返済の意思は当然に必要です。
任意整理は、将来に向かって元金を分割で支払っていかなければいけません。そのため、返済能力と「返済の意思」は絶対に必要条件です。
返済の意思が認められない場合は、そもそも交渉すらできませんので注意してください。
返済の意思があるかどうかは、これまでどの程度返済が続けられたかによって判断される場合が多いです。これまで一度も返済をしていなかったのに、「任意整理をしたい」と言っても、交渉に応じてくれる可能性は非常に低いことが予想されます。
もしも返済できない(返済能力がない)のであれば、自己破産の申請を行うしかありません。
他の債務整理手続きをのデメリットを許容できない場合は任意整理の検討を
任意整理を選択するべき人の特徴は3つあります。
- 自己破産できない職業に就いている人
- 周囲に知られるリスクを減らしたい人
- 一部の債務のみを整理したい人
任意整理は債務整理のひとつであり、債務整理には自己破産・個人再生・任意整理の3種類があります。
それぞれ特徴がありますが、任意整理は債務整理の中でも比較的簡単かつ幅広い人に対応している整理手続きです。
しかし任意整理を選択しなくても、個人再生や自己破産のほうが借金を大幅に減額・免除できるケースもあります。
ただし職業によっては任意整理を選択せざるを得ない人や、状況によっては任意整理を選択すべき人がいますので詳しくお伝えします。
自己破産ができない職業に就いている人
自己破産できない職業に就いている方は、任意整理もしくは個人再生で債務整理を行うしかありません。
自己破産ができない職業は下記のとおりです。
士業 | 士業の方々は、欠格事由に該当してしまうため、自己破産ができません。また、自己破産を行った者は一定期間士業に従事することはできません。 |
---|---|
公務員の委員長など | 公務員の委員長など、役職に任命されている方も自己破産ができません。 |
団体企業の役員 | 取締役や監査役、執行役員など企業の役員をしている方も自己破産ができません。 |
金融関連業 | 貸金業者の登録者や生命保険募集人など金融関連の職種に就いている方も自己破産ができません。 |
自己破産のできない職業に就いている人は、職を辞して自己破産手続きを行うか、個人再生もしくは任意整理を行うしかありません。返済能力や返済の意思があるのであれば、任意整理のほうが手続き等が比較的簡単に行えます。
周囲に知られるリスクを減らしたい人
任意整理は債務整理の中でも、周囲の人に知られるリスクがかなり低いです。
まず、任意整理は裁判所を通さずに手続きが行えるため、弁護士などの専門家に「内々に手続きを行ってほしい」と伝えれば、配慮してくれます。
また、個人再生や自己破産で必要な書類として代表的な退職金証明書や配偶者の収入証明書を提出する必要がありません。
また、任意整理は官報(誰でも閲覧できる国の広報誌)に掲載されることもありません。
そのため、他の債務整理と比較しても知られるリスクがかなり低いので、知られたくない方は任意整理を行ってください。
一部の債務のみを整理したい人
任意整理は、一部の債務(借金)のみを整理できます。
例えば、車のローンと消費者金融からの借金がある方で、「消費者金融の借金のみを整理したい」という整理が可能です。任意整理意外の債務整理を行ってしまえば、車も当然に没収されてしまいます。
また、車のローンに対する任意整理を行っても当然に車が没収されてしまいます。車を手元に残しておきたい方や、一部の借り入れのみを返済したい方は、任意整理を行いましょう。
自分に適する債務整理の方法は弁護士に相談して教えてもらおう
「債務整理」と言っても、任意整理や個人再生、自己破産などさまざまです。
「債務整理」を検討している方のうち、自分がどのように債務を整理すべきかわからない方は、弁護士などの専門家へご相談してみてください。
今回は、任意整理についてお伝えしてきましたが、任意整理を行うには安定した収入や返済の意思など必要条件がいくつかありました。
もちろん、個人再生や自己破産についても条件やメリット・デメリットがあります。
自分が「任意整理をしたい」と思っていても、実際には個人再生や自己破産のほうが適しているという方もいるかもしれません。
反対に「自己破産をしたい」と思っていても、自己破産の免責(負うべき責任を負わないこと)を認められる可能性は低い方もいるかもしれません。
自己破産や個人再生は、裁判所が最終的な決定を下しますが、まずは弁護士などの専門家に判断してもらうのもひとつの手段です。
自分がどのように債務を整理すべきか悩んでいるのであれば、まずは弁護士に相談をしてみましょう。
まとめ
今回は、任意整理のメリット・デメリットについてお伝えしました。
任意整理は、他の債務整理と比較しても手続きが簡単で、周囲に知られるリスクが低い、財産の維持ができるなどがメリットです。
一方で、任意整理は必ず応じてもらええるとは限らず、異動情報が掲載されてしまうというデメリットもあります。
もしも現状で借金返済が厳しいのであれば「借金総額がいくらなのか」や「毎月いくら支払っているのか、いくらなら支払えるのか」を整理し、自分の状況を客観的に把握しましょう。
すべて計算をし、整理をした上でもなお借金返済が厳しいのであれば、まずは任意整理の検討をしてみてください。
もしも、自分で任意整理を行うべきかどうかの判断が難しいのであれば、弁護士に相談をしてみるのもひとつの手段です。
今回お伝えした任意整理のメリット・デメリットを把握した上で、任意整理を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
FPライターとして“お金”にまつわる記事を数多く寄稿。プライベートでは裁判傍聴が趣味であり、法律関連の知見もある程度持っております。債務整理については、FPとしてのライフスタイルアドバイスも含めながら、わかりやすい記事を発信していきます。

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