自己破産のデメリットは意外と少ない?家具などの生活必需品や現金も残せるって本当?

自己破産のデメリットは意外と少ない?家具などの生活必需品や現金も残せるって本当?
監修
弁護士吉田 伸広

借金の返済が大変なので調べてみたところ、自己破産をすれば借金がなくなると知りました。でも、何か大きなデメリットもありそうで怖いんですけれど…。

確かに、自己破産をすれば、原則として借金の帳消しという強力な効果を得ることができます。同時に、一定財産以外は取り上げられたり自己破産手続きのために数十万円の資金を用意しなければいけないなど、それ相応のデメリットが生じるのも事実です。

やはりデメリットもあるんですね…。それなら、やっぱり自己破産をせずにこのまま何とか借金の返済を続けた方が良いのでしょうか?

自己破産をするといくつかのデメリットは生じますが、その内容は正確に理解する必要があります。相談者さんにとっては大きなデメリットとは言えない可能性もありますからね。それに、そもそも自己破産以外の債務整理手続きという選択肢も存在します。弁護士などの専門家に相談して、適切なアプローチを提案してもらうべきでしょう。

借金が苦しいという現状に対する法的な改善策について考えたとき、借金の帳消しという強力な効果をもたらす自己破産は、有効な手段の一つであると言えるでしょう。

ただし、借金の返済で困っている債務者にとって大きなメリットをもたらす半面、住宅などの財産が取り上げられたり今後クレジットカードが使用できなくなるなど、いくつものデメリットが生じうるという現実もあります。

そもそも、自己破産は債務整理手続きの一つの手段でしかありません。借金苦の現状に対するアプローチとしては、任意整理や個人再生など、他の選択肢も残されています。その中で、いきなり自己破産という選択肢に飛びつくのは安直です。

なぜなら、債務整理手続きごとに生じるメリット・デメリットの内容は異なり、それらをすべて勘案しなければ、「債務者にとって適切な債務整理手続きとは何か」という問いに対する答えを導き出すことはできないからです。

借金の帳消しというメリットだけに飛びついてしまうと、思わぬ自己破産のデメリットに足元をすくわれかねません

以下では、自己破産のデメリットを中心に、自己破産に対する誤解や注意点を説明します。自己破産のデメリットについて正しく理解し、弁護士などの専門家への相談のきっかけとしてください。

この記事でわかること
  • 自己破産をすると、「借金の帳消し」という強力な効果を得ることができる。その反面、自己破産手続きならではのデメリットや問題点があるので、債務者自身にとって本当に役立つ手段なのか慎重に判断しなければいけない。
  • 自己破産をするとほとんどの財産が手元からなくなってしまう。他にもいろいろなデメリットが生じ、自己破産前と同様の生活を送ることができない中で、生活を再建するには多大なる努力が求められる。
  • ギャンブルが原因で借金返済に行き詰まったような場合など、一定の条件のもとではそもそも自己破産が認められないこともある。また、自己破産が認められたとしても免責されない債権があるなど、自己破産については制度上注意を払うべき点が少なくない。弁護士などの専門家に依頼をして、適切な債務整理方法についてアドバイスを求めよう。
目次
  1. 自己破産のデメリットって何?
  2. デメリットを許容できない場合は他の手続きも検討を
  3. 自己破産する前に覚えておきたい正しい知識
  4. 自己破産のデメリットに関する不安、この疑問って誤解なの?
  5. 自己破産は専門家に相談を!デメリットを許容できない場合は他の手続きも聞いてみよう
  6. まとめ

自己破産のデメリットって何?

まずは、自己破産のデメリットについて説明します。

実際に自己破産に踏み切った際に生じる以下のデメリットの内容を正確に理解して、ようやく「本当に自己破産をすべきかどうか」「自己破産をしたとして今後生活を続けていけるのか」を判断できます。

具体的なデメリットは、以下の6点です。

  • 一定の財産が処分されてしまう
  • 資格制限と移動制限がかかる
  • 予納金などのまとまったお金が必要
  • 官報に掲載される
  • 信用情報機関に事故情報が登録される
  • 保証人などに迷惑がかかる

それでは、それぞれの詳細について説明します。

【自己破産のデメリット①】自己破産をすると一定の財産が処分される

自己破産手続きとは、これ以上借金の返済ができないと考える債務者が自分の所有している財産を債権者に振り分けて債務の弁済に充当します。それでも債務が残る場合は債務の免除手続きができ、債務が免責される可能性があります。

つまり、債務の帳消しという強力な効果を得るためには、まず「自分の財産を処分」しなければいけません。これは、自己破産手続きの大きなデメリットと言えるでしょう。

ただし、「一定の財産については手元に残すことができる」という余地は残されています。以下の3つに該当する場合には、当該財産を手元に残したまま自己破産手続きを進めることができます。

  • 自由財産
  • 自由財産拡張
  • 破産管財人が放棄した財産

それぞれについて、具体的に見ていきましょう。

自由財産は債務者の今後の生活のためのもの

自由財産とは、自己破産手続き終了後の債務者の生活を保障する目的から、債務者自身に自由な処分権限が認められた財産のことです。具体的には、以下の3点です。

  • 新得財産(破産法第34条1項)
  • 差押え禁止財産(破産法第34条3項2号)
  • 99万円以下の現金(破産法第34条3項1号)

まず、「新得財産」とは、自己破産手続きが開始した後に債務者が取得した財産のことです。

自己破産を申し立てたからと言って収入が途絶えるわけではありませんし、生活のために必要な物品は購入するはずです。そのようなものまで債権への充当に充てられるのでは、債務者の生活が立ち行かなくなるでしょう。

したがって、自己破産によって換価処分の対象になるのは「自己破産手続きが開始したときの債務者の財産」に限定され、新得財産については債務者自身が自由に扱えるとされているのです。

次に、「差押え禁止財産」も債務者の手元に残すことができます。具体的には、冷蔵庫や洗濯機、電子レンジやテレビなど、一般的な生活を送るために最低限必要だと考えられる物品はこれに該当します。

ただし、もちろん債務者ごとに事情は異なりますが、例えば複数のテレビ、使用していないエアコンなどについては、差押え禁止財産の対象から外れ、取り上げられる可能性があります。

また、家電製品のうちローンの支払いを継続しているようなものについては、ローン会社がこれを引き上げてしまう可能性もあるのでご注意ください。

また、「99万円以下の現金」についても、債務者の手元に残すことが認められている自由財産とされています。

以上の自由財産については、債権者に割り当てられることなく、債務者自身が今後の生活のために自由に処分することが認められるのです。

債務者の生活のために自由財産が拡張されることも

上述の自由財産は、一般的な相場観から「今後の生活維持のために最低限必要なもの」と考えられた結果、債務者の手元に残すことが認められたものです。

しかし、債務者の生活状況次第では、この自由財産を残すだけでは生活の維持が難しい場合もあるはずです。そのような事情を考慮して、裁判官の裁量によって「自由財産の拡張」が認められる場合があります。

例えば、足に障がいを抱えているある債務者にとって自動車は生活を維持する上で必須のものであったとしましょう。原則として自動車は競売の対象となるなどして債務者の手元から取り上げられるものですが、この債務者から自動車を奪ってしまうと、買い物や仕事など、一切の代替手段が失われ、最低限度の生活さえ送ることができなくなってしまいます。

このような個別的な事情を考慮した上で、裁判所の裁量に基づいて自由財産を拡張することが認められています

破産管財人が放棄した財産は債務者の手元に

債権者が有する債権に充当するために、債務者の財産は破産管財人が管理することになります。

ただし、債権者に割り当てる必要性が認められないもの(価値がない、換金コストがかかるなど)については、管財人がこれを放棄できます。

管財人によって放棄された財産は、債務者の手元に残るので、今まで通り使用することができます。

【自己破産のデメリット②】資格制限や移動制限などの各種制限が生じる

自己破産手続きが開始されると、一定の資格について制限が加わるので、仕事ができなくなるというデメリットが生じます。

ただし、未来永劫資格が制限され続けるのではなく、免責許可のタイミングなどで復権することによって資格制限がなくなります。

ただ、免責許可がおりるまでの数ヶ月の期間、この資格による仕事から収入を得られなくなるので、ご注意ください。

自己破産による資格制限は幅広い職種に生じるデメリットですが、基本的には「公的な資格」や「私法上他人の利益に働く地位に就く資格」がこれに該当します。

例えば、弁護士、司法書士、司法修習生、公認会計士、税理士宅地建物取扱主任者などは前者の例と言えるでしょう。他にも、遺言執行者や保佐人、補助人などは後者の例です。

現在の職業について自己破産手続きの開始が資格制限事由に該当するか、ご確認の上、自己破産手続きの申立てをしてください。

また、資格制限だけではなく、移動についても制限が加えられます。居住地の変更はもちろんのこと、旅行や長期の出張についても、都度裁判所の許可を要します。

必要があると認められるものならば許可は得られますが、手続上の手間が生じるのはデメリットです。

さらに、自分宛の郵便物を自由に処分できなくなります。自己破産手続き中は、選任された破産管財人がこれを管理するとされているので、破産管財人の元に郵便物が届きます。

なお、これに関連してしばしば勘違いされるのが、選挙権に関する制限です。自己破産をしても、選挙権は制限されないのでご安心ください。

【自己破産のデメリット③】予納金など、まとまった費用が必要

自己破産手続きを申し立てる際には、最初に裁判所に対して予納金としてまとまった費用を支払わなければいけません

手数料や官報公告費用、破産管財人の報酬などを含め、数十万円の費用が必要です。また、自己破産は専門家に依頼して行うものなので、弁護士費用なども用意しなければいけません。

借金の返済で苦しむ債務者にとって、この費用の捻出はそう簡単なものではないために、自己破産のデメリットと考えられるでしょう。

ただし、自己破産手続きを専門家に依頼すれば、借金返済督促がストップし、それまで続けていた返済をしなくても良くなります

免責許可がおりるまでには最低でも数ヶ月を要するので、その期間にこれらの費用を集めることでデメリットを回避することができます。

【自己破産のデメリット④】官報に掲載される

自己破産をすると、官報にその旨が掲載されます。官報は一般に広く開示されるものなので、もし周囲の人がこれを目にすれば、露見してしまいます。

ただし、官報を日常的に読んでいる人はほとんどいないので、官報経由で自己破産の事実を周囲に知られる心配は少ないでしょう。

なお、自己破産の対象となった債務について、身近な人が保証人になっていた場合や、あるいは身近な人自体が債権者になっていた場合には、自己破産手続きの中で知られることを避けられません。

【自己破産のデメリット⑤】信用情報機関に登録される

自己破産をすると、信用情報機関に金融事故情報が登録されます。この事故情報が登録されている間は、自己破産者にとっていくつものデメリットが生じます。

例えば、新規のクレジットカード発行の際、クレジットカード会社はカード発行を申し込んだ人の信用情報を審査します。審査の段階で、クレジットカード会社は各信用情報機関に対して事故情報などの開示を求めるので、自己破産をした事実は確実に露見してしまいます。

その結果、クレジットカードの新規発行は認められません。新たな借入れ、新規ローンについても同様です。

また、スマホや携帯電話を契約する際には、本体代金を分割払いすることができません。新たに賃貸物件を契約できない可能性もあります。

さらに、自己破産前にクレジットカード払いで購入した商品などにつき、まだ全額の支払いを終えていないのであれば、当該商品を返却しなければいけないリスクも残されているのです。

子どもが奨学金の契約をする場面で、保証人になれない可能性も高まるでしょう。

以上のように、自己破産をすると、他の債務整理手続きと同様、信用情報機関に事故情報が登録されてしまうことによっていろいろなデメリットを強いられます

ただし、自己破産の場合における信用情報機関への事故情報の登録は5年~10年です。この期間を経過すれば事故情報が抹消されるので、各種デメリットはなくなります。

また、クレジットカードを使えなくてもデビットカードやプリペイドカードで代用することもできますし、携帯電話などの契約については本体代を一括払いすれば問題ありません。

このように、それぞれのデメリットに対する方策は一定程度残されているのでご安心ください。

【自己破産のデメリット⑥】保証人に迷惑がかかる

自己破産をすると、債務者本人について借金の返済義務はなくなります。しかし、仮にいくつかの借金について保証人が付されていたり、第三者の不動産などに担保が設定されていると、保証人や当該第三者が借金の返済を代わりに求められることになります。

なぜなら、自己破産は債務の存在を完全に消し去るものではなく、「自己破産をした債務者との関係においては債務の履行を求めない」ということに過ぎないからです。

したがって、家族や親族が保証人になっていたり、家族や親族名義の不動産に担保が設定されている場合には、自己破産により保証人などに迷惑がかかりうるというデメリットが生じます。

特に、同一生計内の家族が連帯保証人になっている場合には、更なる対処が必要です。というのも、本人が自己破産をすることによって免れたはずの毎月の借金の返済が家族にそのまま移動するだけだからです。

本人の毎月の負担はなくなりますが、連帯保証人である家族は、それまで本人が負担していた借金額と同様の返済を継続しなければいけません。同一家計における経済的負担は自己破産前後で変化がないのです。

したがって、家計への負担に対して抜本的な解決を図りたいのであれば、家族の自己破産も必要となるのでご注意ください。

デメリットを許容できない場合は他の手続きも検討を

自己破産によって生じるデメリットを受け入れることができるのなら、自己破産手続きを申し立てることに弊害はありません。

しかし、中にはどうしてもデメリットを受け入れることができないという債務者もいるはずです。

例えば、どうしても現在所有している自宅を手放したくないという場合や、資格制限の観点から自己破産の選択が難しい場合、あるいは、どうしても連帯保証人に迷惑をかけられない場合のように、人によって状況やニーズは異なって当然です。

そのような悩みを抱えているのなら、他の債務整理手続きも選択肢に入れてみるべきです。

例えば、個人再生をすれば、住宅資金特別条項を活用できるので、住宅ローンが残っている自宅不動産を処分しなくても借金総額を減らすことができます。

また、任意整理をすれば、整理する債務を自分で選べるので、連帯保証人に迷惑をかけない形で返済可能な計画を作り直すことも可能です。

債務整理手続きごとにメリット・デメリットが異なるので、債務者の個人的な事情を踏まえながら、どの制度を利用するのが適切かを、もう一度再考してください。

自己破産する前に覚えておきたい正しい知識

自己破産手続きに関しては、デメリットとまでは言えないものの、制度それ自体に留意すべき点があります。具体的には、以下の2点です。

  • 免責されない債権(非免責債権)があること
  • 免責許可がおりない場合があること

この2点については、自己破産をする前に必ず覚えておきましょう。

せっかく自己破産を申し立てたのに、希望していた結果を得られない可能性があるからです。それでは、以下をご覧ください。

そもそも免責されない債権(非免責債権)がある

仮に自己破産が認められたとしても、すべての債務が帳消しになるわけではありません。

破産法第253条1項各号で定められているものについては、自己破産成立後も返済を続けていかなければいけないのです。

つまり、せっかくいろいろなデメリットを背負う覚悟で自己破産をしたにもかかわらず、「借金返済から完全解放された再出発」をできないリスクが残されてしまいます。

では、どのような債務が免責されないのでしょうか?

以下の項目ごとに、免責されない非免責債権について説明します。

  • 税金や罰金などの公的な債権
  • 不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 養育費などに関する請求権

それでは、それぞれについて詳細に説明します。

税金(1号)や罰金(7号)など

税金等や罰金などの公的な請求権については、自己破産による免責を受けることができません

例えば、住民税や固定資産税などはもちろんのこと、健康保険料や国民年金などの滞納分についても自己破産の免責対象から外れます。駐車違反の罰金などについても同様です。

ただし、税金などの公的な請求権について滞納している場合、一括弁済が難しいのなら分割返済を交渉することができます

また、経済状況次第では支払いの猶予を求めることもでき、これによって延滞税の支払いを回避することも可能です。

各種公的請求権に関しては、このような形で自己破産後の生活再建を阻害しないような選択肢を検討できます。

不法行為に基づく損害賠償請求権①(2号)

破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権についても、非免責債権として扱われます。

過失や、単なる故意による不法行為ではなく、「悪意に基づく」不法行為の場合に限定されています。

例えば、夫の不貞行為で離婚をする際、妻は夫に対して慰謝料という形の損害賠償請求権をもっています。

このとき、夫の不貞行為が「積極的に妻を害する意図」でなされた場合には非免責債権にあたると考えられるので、夫が自己破産をしたとしても、妻が損害賠償請求権を失うことにはなりません。

他方、夫の不貞行為がそのような意思でなされたわけではなく、いわゆる「単なる浮気」であるような場合には、非免責債権とは扱われません。この場合、夫の自己破産によって妻が有する損害賠償請求権は消滅します。

不法行為に基づく損害賠償請求権②(3号)

破産者が故意または重過失により人の生命や身体を害する場合の不法行為に基づく損害賠償請求権についても、非免責債権として扱われます。

過失ではなく、重過失である点、生命や身体を害する不法行為である点がポイントです。

例えば、夫のDVが原因で離婚をする際、妻は夫に対して慰謝料という名目で損害賠償請求権を有します。夫のDVは故意のもとで行われていますし、そのDVによって妻は身体的な損害を被っています。

したがって、夫が自己破産をしたとしても、非免責債権である妻の損害賠償請求権が失われることはありません。

また、危険運転に相当するような悪質な運転行為によって交通事故を起こし、そのために被害者の身体などに損害を与えた場合についても同様です。

危険運転は、故意あるいは少なくとも重過失が認められると判断できるので、非免責債権として扱われます。他方、前方不注意や車線変更時の不注意などで交通事故を引き起こした場合、「過失」に基づく損害賠償請求権が生じます。

これは、「故意または重過失」には該当しないので、非免責債権にはなりません。後者については、加害者の自己破産によって不法行為に基づく損害賠償請求権は免責されます。

養育費など(4号)

夫婦間の協力義務や婚姻費用分担義務、扶養義務や子に対する監護義務を前提として生じる請求権についても、非免責債権として扱われます。代表的な例として、子どもに対する養育費が挙げられます。

以前、養育費などの支払い請求権は免責許可の対象と扱われていました。しかし、昨今、子のある夫婦が離婚した場合に、一方が他方に対して養育費を支払わずに滞納をするケースが頻発し、ひとり親世帯の経済状況低迷が深刻な社会問題となりました。

そのため、平成17年の破産法改正において、養育費用等に関する請求権が非免責債権に分類され、元配偶者の自己破産によって泣き寝入りを強いられることはなくなったのです。

ギャンブルの借金など、自己破産を申し立てても免責されないケースがある

自己破産を申し立てたとしても、免責が認められないケースがあります。免責が認められなければ、借金の帳消しという自己破産における重要なメリットを享受できません。

今後自己破産の申立てを検討する人にとって、「どのような場面で免責が認められないのか」を把握するのは大切です。

なぜなら、免責不許可のリスクがあるにも関わらず自己破産の申し立てをしても意味がありませんし、そうであるならば、最初から別の債務整理手続きを検討すべきだからです。

以下では、破産法第252条1項各号に定められている免責不許可事由について説明します。

  • ギャンブルや浪費が原因の借金(4号)
  • 財産を隠匿した場合(1号)
  • 換金行為(2号)
  • 偏頗弁済(3号)
  • 詐欺的な借入れ(5号)
  • その他の免責不許可事由について(6号~11号)

それでは、それぞれについて検討していきましょう。

ギャンブルや浪費が原因で財産が減少した場合(4号)

浪費や賭博などの射幸性の高い行為が原因で財産が減少し、借金を抱えるようになった場合には、免責許可の決定はされません。

「浪費」とは、収入に見合わない買い物を繰り返してしまうこと、「射幸性の高い行為」とは、ギャンブルやFXなどがこれに該当します。

借金の原因がこれらにあることが判明すると、自己破産を申し立てても借金が帳消しにならないのでご注意ください。

財産の隠匿などの行為(1号)

債権者を害する目的で、本来財産目録に計上されるべき財産を隠匿したり価値を減少させる行為をした場合には、免責許可の決定はされません。

例えば、自分名義の不動産を所有している場合、自己破産手続きによって競売にかけられてしまいます。

不動産を取り上げられるのを防ぐ目的から、親に登記名義を変更したり、市場価格よりも大幅に低い価格での売却を装ったりすると、免責許可を受けられなくなるのです。

出来るだけ手元に財産を残しておきたい、自己破産前の生活状況を損ないたくないという考えからでしょうが、このような逸脱行為はそもそも免責されなくなってしまうのでご注意ください。

換金行為(2号)

自己破産によってクレジットカードが使用できなくなる前に商品を買いこみ、これを売却すれば現金を手にすることができます。

いわゆる「ショッピング枠の現金化」と呼ばれるものです。自己破産によって借金が帳消しになることを見越してショッピング枠の現金化をするのは、明らかに債権者を害する意図があると判断できるので、このような行為が見受けられる場合には、免責許可はおりません。

偏頗弁済(3号)

本人がいくつもの債権者から借入れをしている状況で自己破産をする場合、原則としてすべての債権者は平等に取り扱われなければいけません。

このような状況下において、特定の債権者に対してのみ優先的に弁済するなどの行為は、他の債権者が換価処分から受け取れる配当を少なくするものであり、債権者の利益を害するものと考えられます。

このような偏頗(へんぱ)弁済が認められる場合には、免責許可はおりません。

例えば、消費者金融に返済するくらいなら、身近に世話になっていた人からの借金を先に返済しておこうと考え、この人に返済してから自己破産をするという行為は偏頗弁済に該当します。

詐欺的な借入れ(5号)

自己破産を申し立てる1年以内に、すでに自己破産の原因となる事実があるにもかかわらず、これを隠すために虚偽の身分証明書を使用するなどして貸主を騙して借り入れを行った場合には、免責許可はおりません。

その他(6号~11号)

その他、虚偽の財産状況に関する帳簿を提出したり債権者一覧表を偽ったり、あるいは裁判所からの説明の求めに応じないなどの事情が認められる場合には、免責許可はおりません。

自己破産手続きを希望する以上、債権者の利益を害したり、裁判所の職務遂行を妨げる行為は当然看過されるべきものではないでしょう。確認のうえ、ご注意ください。

免責不許可事由に該当しても免責される可能性は残されている

免責不許可事由に該当する行為があった場合、それだけで免責が一切認められないというわけではありません。

特に、ギャンブルが原因で多額の借金を抱えてしまったというケースは非常に多いという実情があるにもかかわらず、それらをすべて自己破産手続きから締め出してしまうのは実情にそぐいません。

そこで、免責不許可事由に該当するとされる場合であっても、「裁量免責」というセーフティーネットが用意されています。

裁量免責とは、免責不許可事由の存在が理由となって免責許可をおろせない場合に、裁判所が選任した破産管財人が債務者本人を監督し、再度免責をすべきかを判断するという制度です。

債務者の反省具合や家計状況を一定期間監督し、収支状況に対する指導なども行われます。その結果、確かに自己破産に至る経緯においては問題があったかもしれないが、態度や生活状況の改善が見込まれ、自己破産後の生活に一定の目途が立ったと判断される場合には、免責が認められることになります。

実際、裁量免責制度が効果的に機能していることから、免責不許可が確定するケースはそう多くありません。

自己破産のデメリットに関する不安、この疑問って誤解なの?

自己破産手続きにはここまで説明したデメリットがあるのですが、他方で、一見デメリットと思われがちではあるものの、実は単なる誤解でしかないものもあります。

自己破産のデメリットを正しく理解するのは大切なことではありますが、デメリットでもないものをデメリットと誤認し、それを怖れるがあまりに正しい債務整理手続きを選択できないということがあってはいけません

ここからは、一般の方がよく勘違いしがちな自己破産についての誤解を紹介します。

  • 会社を解雇される?
  • 自宅を取り上げられる?
  • 各種保険は解約される?
  • 戸籍に掲載される?

それぞれ、詳細をご覧ください。

自己破産をすると会社をクビになるって本当?

自己破産を理由に会社を解雇されることはありません仕事をクビになるには、正当な解雇理由が存在する場合に限られ、自己破産はこの「正当な解雇理由」には該当しないからです。

ただし、上述のように、自己破産が職業上の資格制限事由と定められているケースがあります。これらの職業に就いている方については、一定期間、職務を行えなくなってしまうのでご注意ください。

自己破産をすると自宅や自動車などの不動産は手放さないといけないの?

自己破産をすると、通常自宅は競売手続きにかけられることになります。したがって、自宅を手放さざるを得ません。

ただし、競売によって購入者が引き渡しを求めるまでは居住できるので、その間に新たな生活拠点を探すことができます。

また、自己破産をせざるを得ないがどうしても自宅を手放したくないという場合には、自宅を購入できるだけの親族がいれば、いったん親族などに自宅を購入してもらい親族から賃借するなり再度購入するという方法を採用すれば、自宅は残せるでしょう。

自動車については、ローンの返済状況によって対応が分かれます。ローン返済中の車両については、所有権はローン会社にあります。したがって、自己破産によってローンの支払いがストップする以上、自動車は引き上げられてしまいます。

他方、ローンを完済している車両については、原則として自宅と同様、競売手続きにかけられてしまいます。ただし、市場価値がほとんどないような車両については、そもそも競売手続きにかけるだけ無駄です。その場合は、自己破産前と同様、当該車両を所有し続けることができます。

ちなみに、おおよその目安では、普通車の場合は初年度登録から5年以上、軽自動車の場合は7年以上経過している場合には、市場価値がないと扱われ、自動車を手元に残せます。

自己破産をすると生命保険・学資保険も解約されるの?

自己破産は、生命保険や学資保険など、各種保険契約には影響しません。したがって、自己破産を原因とした保険の解約を怖れる必要はありません。

ただし、20万円以上の解約払戻金のある生命保険は、処分の対象となりますので、ご注意ください。

また、上述のように、自己破産後はほとんどの財産が手元には残りません。限られた貯蓄と収入で生活再建を図る中で、各種保険の支払いを続けるのは困難という場合も少なくないでしょう。

結果として、毎月の保険料の支払いが厳しくなって家計を圧迫する事態に追い込まれないうちに、生命保険や学資保険などについて、自己破産をきっかけにその必要性を判断すべきです。その際、解約違約金などの定めについてご注意ください。

自己破産をすると戸籍に影響があるの?

自己破産をしても戸籍や住民票にその旨が記載されることはありません。上述のように、自己破産について記録が掲載・登録されるのは、官報と信用情報機関だけです。

したがって、必要に応じて提出を求められる住民票などから第三者に自己破産の事実を知られるおそれはないのでご安心ください。

なお、免責許可が下りるまでの間、一定の条件を充たす債務者に限って、市町村の破産者名簿に名前が掲載される場合があります。

ただ、この破産者名簿とは、「破産者ではないことを証明するため」に利用される名簿で、破産が職業資格の制限として機能する弁護士などの仕事に就く際に利用されるといったものです。第三者がアクセスできるものでもないので、破産者名簿に掲載されることが何かしらの実害をもたらすことはありません。

自己破産は専門家に相談を!デメリットを許容できない場合は他の手続きも聞いてみよう

自己破産には、いろいろなデメリットが存在します。また、制度自体に潜む注意点も看過すべきではないこともご理解いただけたはずです。

それでもなお、自己破産手続きのデメリットを考えると躊躇してしまう、自分に適切な選択肢が本当に自己破産なのかを理解できない、というのであれば、ぜひ弁護士などの専門家に相談してください。

自己破産を含む債務整理に長けた専門家は、各債務整理手続きを熟知しています。それぞれの債務者にとってどの手続きが適切なのか、どのような形で手続きを進めるべきかを的確にアドバイスしてくれるでしょう。

デメリットや弊害に関する説明も充分に受けることができるので、債務整理手続きに踏み出す勇気を貰えるはずです。

借金返済で苦しい現状を打破するきっかけを作るという意味でも、まずはお気軽にご相談ください。

まとめ

この記事のまとめ
  • 自己破産によって免責許可を得ることができれば、ほとんどの債務が帳消しになる。しかし、今後の生活のために必要最低限の財産以外はすべて取り上げられてしまうので、自己破産後の生活を維持するのに苦労する。
  • 資格制限や移動制限など、自己破産手続き開始から免責許可がおりるまでの間に限定されたデメリットもあれば、信用情報機関への登録というように、数年にわたって続くデメリットもある。各デメリットについて一定の対策を講ずることはできるが、デメリットを完全に克服するほどのものではないので注意が必要。
  • 自己破産手続きによって生じるデメリットをどうしても避けたいのなら、他の債務整理手続きも検討すべき。個人再生や任意整理を選択すれば、自己破産のデメリットを回避しながらも債務状況を回復する道筋を見つけることができる。
  • そもそも自己破産手続きをするべきなのか、あるいは他の選択肢の方が良いのかは、弁護士などの専門家に相談した方が良い。多くの債務整理案件に触れてきた専門家であれば、経験を踏まえた上で必要なアドバイスをしてくれる。

自己破産には、以上のようなデメリット及び制度上注意すべき点がありました。甘受しうるデメリットもあれば、できれば避けたいと思うデメリットもあったと思います。債務者ごとに事情は違って当然なのです。

重要なのは、デメリットの内容を正確に理解した上で、本当に自己破産手続きが適切であるかを見極めることです。

デメリットを甘く考えてしまったせいで自己破産後に後悔することなどあってはいけませんし、デメリットについて誤解してしまっているせいで自己破産に踏み切れず、再出発の機会を失うことも同様に避けなければいけません。

そのために必要なのは、熟練の専門家に相談することです。

債務整理のプロに依頼すれば、債務者ひとりひとりの状況に寄り添いながら、借金返済による窮状から脱出するためのプロセスを提示してくれます。

出来るだけ早期に新たな生活に踏み出すためにも、どうぞお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

洸太郎

田舎暮らしのフリーライター・フリー翻訳家。得意ジャンルは法律関係、金融関係、株・為替関係など。浮世離れした生活のわりに、仕事の内容は結構現実的。犬・猫・子どもと戯れながら、マイペースな日常を謳歌する。京都大学経済学部中退(高卒)。

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