病気で借金の返済ができないときの解決法!長期入院なら債務整理をしよう


病気で入院したことによって、収入が途絶えてしまいました。借金が返せないのですがどうしたらよいでしょうか?


まずは、債権者に返済が遅れることを連絡してください。一時的であれば返済を待ってくれる可能性があります。また、すぐに復職の見込みがある場合は、保険金や労災などを利用すれば返済が続けられるか検討してください。
退院や復職の目処は立っていません・・・。医療費もかさみそうで借金の返済が続けられるかとても不安です。


長期的な入院などで収入の目処が立たないのであれば、債務整理を弁護士に依頼するのがよいでしょう。体調を考慮した返済計画や手続きを一緒に考えます。
病気になって借金が返せなくなってしまう可能性は、借金を抱えている方であれば誰にでもあります。
しかし、病気を理由に借金が免除されることはないのが現状です。
病気で収入が途絶えたからといって、債権者へ連絡をしないまま借金を滞納してしまうと厳しい取り立てや差押えになりかねません。
そのため、まずは回復の見込みや、回復後の収入見込みを具体的に把握しましょう。
債権者への交渉で、数日程度であれば返済を待ってくれる可能性があります。また、公的制度や医療保険を活用すれば借金の返済を続けられることもあるでしょう。
一方で、長期的に借金の返済ができないのであれば、債務整理を視野に入れた借金問題の解決を検討していかなければいけません。
病気で借金を返せずに悩んでいる方であっても、それぞれの状況によって解決策が異なります。本記事を参考に、現在、自分が置かれている状況と対策を確認していきましょう。

- 少しでも返済が遅れるときは債権者に必ず連絡しよう。
- 一時的に返済が困難なときは医療保険や労災を申請して返済に充てよう。
- 返済目処が立たないときは債務整理の検討を。自分の状況に合わせた手続きをしよう。
病気でも借金の支払いは免除されないので必ず債務者へ連絡をしよう
病気で借金が返済できなくなっても、借金の返済義務がなくなることはありません。
しかし、債権者に病気が理由で返済が遅れる旨を伝えれば、支払いを一時的に猶予してもらえることがあります。
ただし、返済が遅れる期間は数日から1週間程度であり、早期に返済の目処が立っていないと返済の猶予を認めてもらえる可能性は低いです。
いずれにしても、支払えないことがわかった時点で、債権者に必ず連絡をして無断で滞納してしまうことは絶対に避けましょう。
病気やケガを理由にした借金の減額は認められない
病気やケガは債務者の事情であり、債権者が借金の返済に対して特別な措置をとる義務はないとされています。
そのため、病気やケガを理由に借金の減額を債権者に交渉しても、基本的に認められません。
むしろ、債務者に支払い能力がなくなり、滞納をしているとなると財産の差押えをおこなう可能性があります。
その場合、借金に連帯保証人が設定されていると、連帯保証人が借金残債の一括請求を受けます。
もしも病気やケガをしてしまい、借金の返済が困難になってしまったら自分で債権者とは交渉せず、弁護士に相談するとよいでしょう。
1週間程度であれば返済を待ってくれる可能性がある
返済が遅れる可能性があるときは、必ず債権者へ連絡しましょう。
病気やケガで借金が返せなくても早期の回復が見込めるのなら、返済を待ってくれる可能性があります。
待ってくれる期間は債権者によって異なりますが、数日から1週間程度であることがほとんどです。
また、次の月に2ヶ月分返済が可能なら、その旨を伝えれば1ヶ月の猶予が認められるケースもあります。
支払いを待ってくれる可能性がある主な条件は以下のとおりです。
- 早期の回復が見込める
- 回復後に収入の確保ができている
- 具体的な返済日を指定できる
病気や怪我は債務者の事情であり、債権者が借金の返済に対して特別な措置をとる義務はないとされています。
そのため返済期間に猶予が欲しい場合は、債務者から債権者に支払いを待ってもらえるように交渉が必要です。
そのときに「いつまでに返済できるのか」を必ず伝えましょう。
そして、「病気が治ったあとも安定して返済できるのか」についても、交渉をするうえで大切なポイントです。
もしも、返済していける見込みがないのであれば、債務整理を検討するのがよいでしょう。
一番避けなければならないのは、債権者へ連絡せずに滞納してしまうことです。
「病気が早い段階で治る見込みがあるから、治ったら返済しよう」と勝手に滞納すると、事情を知らない債権者からの取立てや差押えがおこなわれる可能性があります。
そのため、少しでも返済が遅れるときは必ず債権者へ連絡しましょう。
病気やケガで一時的に借金の返済ができないときの対処法
病気の完治目処や復職の目処、収入の目処が立っているのであれば「一時しのぎのお金」を工面すれば借金を滞納せずに返済できます。
業務が原因となった病気やケガであれば、労災保険を申請すれば休業補償が受けられます。
また、医療保険やがん保険に加入していれば、入院給付金などを受け取れる場合がほとんどです。
そういったお金を受け取れば療養中でも収入が減らないのであれば、復職するまで無理なく借金の返済が続けられるでしょう。
この項目でお伝えするのは回復後に収入見込みがある場合の対処法です。
もしも回復の目処や収入見込みがないときは後の項目でお伝えする債務整理を検討するのがよいでしょう。
「入院給付金」などの保険金を使って返済する
医療保険やがん保険に加入されている方は多いのではないでしょうか。
そのような保険は入院や手術をしたり、がんと診断されたときに入院給付金をはじめとした保険金が支払われます。
支給される保険金の種類や金額は加入している保険によって異なるので、保険の担当者に確認するとよいでしょう。
実際に支払われた保険金の使いみちは定められておらず、治療費に充ててもよいですし「借金の返済」にも充てられます。
ただ「入院が長引いたり手術をしたら、費用が高額になりそうで入院給付金を借金返済に充てるのは不安」と思う方も多いのではないでしょうか。
その場合は、後に解説する「高額療養費制度」を利用すれば、必要以上の心配はいりません。
高額療養費制度は健康保険に加入されている方であれば誰でも利用でき、高額医療費を支払った際に差額分が返金される制度です。
一方で入院給付金などの保険金は、受けた治療や入院費等に対して支払われます。
一時的な対策ではありますが、短期間の入院等で病気が回復したあとに返済できる見通しがあれば、入院給付金を利用してみてもよいでしょう。
業務に起因する病気・ケガであれば労働災害保険を申請して収入を確保する
仕事中に発生した事故や病気であれば、労働災害保険の保険給付対象です。
業務上で発生したうつ病などの精神疾患も、労災保険の対象となり得ます。
労働基準監督署長あてに労災保険の給付を請求して、調査がおこなわれて労災が認められると保険金が給付される仕組みです。
労災保険の申請は勤務先が本人に代わってすることも多いので、勤務先に確認するとよいでしょう。
また、4日未満の休業は労災保険ではなく、勤務先が休業補償をすると厚生労働省が定めています。
労災保険の詳細は、厚生労働省のページを参考にしてください。
傷病手当金を申請して借金の返済を補填する
健康保険に加入されている被保険者(本人)が業務以外の病気やケガで働けなくなってしまった場合は、傷病手当金が支給されます。
傷病手当金は最長で1年6か月受給が可能であり、うつ病等の精神疾患も支給対象です。
ただ、傷病手当金として受け取れる金額は給与の80%程度ですので、満額が支払われるわけではありません。
生活と借金がギリギリ返済できていた方にとっては、傷病手当金からの借金返済は厳しいかもしれませんが、借金の返済を補填する役割は担ってくれるでしょう。
傷病手当金が支給される条件は以下のとおりです。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
傷病手当金を受け取るには、上記の条件をすべて満たしている必要があります。
また、申請用紙は全国健康保険協会のページからダウンロードできます。
さらに詳しい条件も確認できますので参考にしてください。
参照:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
高額療養費制度を申請して医療費の一部を返還してもらう
先にもお伝えしましたが、健康保険に加入されている被保険者、被扶養者の方は高額療養費制度を利用できます。
高額療養費制度を利用すると、被保険者の所得に応じて決定された自己負担額以上の医療費が発生しません。
ただし、高額療養費制度は自分で申請をする必要があり、申請のタイミングがずれてしまうと医療費を一時的に自己負担しなければいけません。
そのため、借金の返済で精一杯な方や借金の返済すらままならない方は、早めに申請を出しておきましょう。
早めに申請して「限度額適用認定証」を病院に提出すれば、自己負担額を超えた請求がされることはありません。
治療費の支払いと借金返済の両立に不安がある方も、高額療養費制度を利用すれば返済の見通しが立てやすくなるでしょう。
医療費の1ヶ月の自己負担額は所得に応じて決められており、その金額を超えた場合、高額療養費制度を利用するとあとから超過分が返還されます。
前もって申請すると、後からの返還ではなく支払い時に高額療養費制度が適用されるので、自己負担額を超えた請求を受けることはありません。
自己負担限度額は以下を参考にしてください。
所得区分 | 自己負担限度額 | ※多数該当 |
---|---|---|
①区分ア (標準報酬月額83万円以上の方) (報酬月額81万円以上の方) |
252,600円+(総医療費※1-842,000円)×1% | 140,100円 |
②区分イ (標準報酬月額53万~79万円の方) (報酬月額51万5千円以上~81万円未満の方) |
167,400円+(総医療費※1-558,000円)×1% | 93,000円 |
③区分ウ (標準報酬月額28万~50万円の方) (報酬月額27万円以上~51万5千円未満の方) |
80,100円+(総医療費※1-267,000円)×1% | 44,400円 |
④区分エ (標準報酬月額26万円以下の方) (報酬月額27万円未満の方) |
57,600円 | 44,400円 |
⑤区分オ(低所得者) (被保険者が市区町村民税の非課税者等 |
35,400円 | 24,600円 |
※多数該当とは、直近12か月の間で高額療養費を3回支払った場合、4回目から適用される自己負担限度額です。高額療養費制度は1か月単位で自己負担額を設定していますが、4か月以上の長期入院をしなければいけない場合や、入退院などを繰り返し、3回以上高額療養費制度を利用した場合に利用できます。
例えば所得区分③ウに該当した場合、自己負担限度額は下記の計算で求められます。
自ら申請をする必要がありますが、自己負担額を超えた治療費を支払う必要がなくなるので、借金返済の負担も軽くなるでしょう。
ただし、高額療養費制度が適用されるのは業務外で発生した病気や怪我の場合に限ります。
借金返済の目処が立たないようなら債務整理を依頼しよう
以下のような状況に当てはまる方は、弁護士に債務整理を依頼するのがよいでしょう。
- 全治の目処が立たずいつ復職できるかわからない
- 病気をきっかけに退職してしまったから収入がない
- 長期入院が確定していて、借金の返済ができる見通しが立たない
この先の返済目処が立たないのであれば、早い段階で債務整理を検討されたほうがよいでしょう。
早い段階で債務整理を依頼して、状況に合わせた返済の目処を立てたほうが治療に専念できるはずです。
また、入院中や療養中でも債務整理の依頼は可能です。
つぎの項目から債務整理について詳しくお伝えします。
一定の収入があるなら任意整理で利息をカットしよう
- 病気で収入が減ってしまったけど、毎月の返済額が少しでも軽減されれば支払える
- 少しずつでも返済していきたい気持ちが強い
上記のような方は、任意整理を検討されてみてはいかがでしょうか。
任意整理は、将来の利息をカットして元金のみを返済していく債務整理手続きです。
最低限の返済能力や返済意思が求められますが、他の債務整理とは異なり裁判所を介さずにできる手続きなので、費用も安く手続きにかかる期間も比較的短いです。
毎月の返済額も相談ができますので、無理のない範囲での返済額を決定できます。
ただ、任意整理は債務者と債権者との交渉です。弁護士が債務者の代理人として交渉をおこなうのが一般的ですが、債務者の返済能力が求められます。
そのため、長期間の入院が確定していて、いずれは収入が途絶えてしまうなどの不安要素があれば、交渉が成立しない可能性があります。
もしも交渉が成立しなければ、自己破産や個人再生などの法的強制力を持った債務整理手続きに移行するとよいでしょう。
自分でも任意整理手続きができるのかどうか悩んだ方は、まず弁護士へ相談をしてみてください。今後の返済計画も含め話し合い、債務者にとって最適なプランを提案してくれます。
体調回復・復職の見込みがなく返済困難であれば自己破産or個人再生を検討しよう
以下に当てはまる場合は、自己破産もしくは個人再生を検討されたほうがよいでしょう。
- 借金総額が年収の1/3を超えているが、退院時期が未定
- 今後の収入の見込みが一切なくて返済が困難
- 病気の治療に専念したいので債務をすべてなくしたい
個人再生や自己破産は、裁判所の決定でおこなわれる法的強制力を持った手続きです。
そのため、債権者の意思に関係なく強制的に借金の減額や借金をなくせます。
また、個人再生は、住宅や車など高価な資産を残したい方向けの債務整理手続きです。借金は残りますが、借金の大部分をカットできるため返済計画が立てやすくなります。
そして、自己破産は債務者の資産を処分して借金をすべてなくす手続きです。住宅や車、一定額以上の解約返戻金がある生命保険契約等はすべて処分対象です。
返済の見通しが立たないが、個人再生・自己破産どちらの債務整理手続きをするべきか悩んでいるのであれば、弁護士へ相談してみてください。
病気で借金が返せないのであれば、早い段階で借金問題を解決したほうが治療に専念できるでしょう。
以下の記事で債務整理の具体的な流れを詳しく説明しているので、参考にしてください。
住宅ローンが残っているときは団信保険を確認しよう
個人再生手続きはローンの残っていない住宅や車など、多くの資産を残したまま、借金の大部分をカットできます。
これが自己破産とは大きく異なる部分であり、資産を守りたい方にはおすすめの債務整理手続きです。
ただ、ローンの残っている住宅や自動車などの資産は、個人再生でも競売に掛けられてしまう可能性があります。
そのため、病気になって住宅ローンや自動車ローンなどが返せないのであれば、自己破産を選択したほうがよいかもしれません。
ただ住宅ローンに関しては、必ず団信保険(団体信用生命保険)に加入されているはずです。
団信保険は、ローン契約者が死亡もしくは高度障害状態になってしまった場合に、住宅ローンを肩代わりしてくれる保険です。
団信保険は、三大疾病(心筋梗塞・がん・脳卒中)に対応したものや、八大疾病(三大疾病と五大疾病糖尿病・高血圧性疾患・肝硬変・慢性膵炎・慢性腎臓病を組み合わせたもの)など、補償範囲が広いものもあります。
もしもローンが残っている住宅をお持ちの方が病気で借金を返せないと悩んでいるのであれば、ご自身で加入した団信保険の確認をしてみてください。
病気の種類によっては、住宅ローンの返済をする必要がなくなる可能性があります。
まとめ
病気になって借金を返せなくなってしまう可能性は、借金を抱えている誰にでもあることですが、病気やケガは借金の減免理由にはなりません。
病気やケガが原因で、借金を支払えなくなっても絶対にしてはいけないのが「無断で借金を返済しないこと」です。
返済ができないことがわかった時点で債権者に相談しましょう。
そのときは、病気になってしまった旨、いつまでには返済できる旨を伝えたうえで、返済を待ってもらえるよう交渉してみてください。一時的であれば、返済を待ってくれる可能性が高いです。
ただ、いつまでに返済ができるかの見通しが立たない場合や、収入の目処が立たないときなどは、交渉よりも債務整理を検討すべきでしょう。
無料相談や後払いに対応している弁護士もいるので、まずは相談してみてください。
自分の状況を把握し、自分に合った方法で無理なく借金の返済をしていくとよいでしょう。

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