奨学金が債務整理に向いていないのはなぜ?おすすめできない理由と債務整理以外の対処方法を解説!

奨学金の返済が負担になり、債務整理を考えています。奨学金は債務整理できるのでしょうか?

奨学金は債務整理できます。ですが奨学金を債務整理することはおすすめできません。

おすすめできない理由を知りたいです。

奨学金を債務整理すると保証人や連帯保証人が返済残額を請求されるためです。そのため債務整理以外の解決方法をおすすめします。

上記のように奨学金の返済を負担に感じている方は珍しくありません。実際に、平成28年には2,009人もの人が奨学金を返済できずに自己破産しています。しかし、奨学金の債務整理を安易にするのはおすすめできません。

奨学金の債務整理をしてしまうと、連帯保証人や保証人が残額を請求されるためです。その請求が原因で、連帯保証人や保証人が債務整理を余儀なくされたケースもあります。

そのため、出来る限り奨学金の債務整理は避けるべきです。代案として、奨学金を返済できないときに利用できる救済制度の利用資格があるか確認することをおすすめします。

ただし救済制度を効果的に利用するためには、奨学金を債務整理するメリット・デメリットや救済制度の詳細を知っておくことが必要不可欠です。

そこでこの記事では奨学金の債務整理をおすすめしない理由や連帯保証人や保証人への影響、奨学金の救済制度について徹底的に解説しています。最後まで読んで参考にしてみてください。

この記事でわかること
  • 奨学金の債務整理はできるがおすすめできない
  • 奨学金は利率が低いため任意整理ではあまり効果がない
  • 個人再生は残債が減額されるが減額分は連帯保証人が請求される
  • 自己破産は残債が無くなるが残債全額を連帯保証人が請求される
  • 連帯保証人や保証人が一括返済を求められて返済できない場合は債務整理が必要になる
  • 債務整理以外の解決方法には返還期限猶予制度や減額返還制度、返還免除制度、延滞金減免制度がある

奨学金の債務整理はできるがおすすめできない

奨学金の債務整理はできます。しかし安易に債務整理を選択することは、おすすめはできません。安易に奨学金を債務整理すると、連帯保証人や保証人に迷惑がかかってしまう恐れがあるためです。

債務整理で返済義務が免除または減額されるのは債務者本人のみです。そのため債権者は、残債全額または減額分を連帯保証人や保証人に請求します。この際、連帯保証人や保証人が請求された金額を支払えない場合は、債務整理せざるを得ません。

奨学金の債務整理がおすすめできない理由

奨学金の債務整理がおすすめできない理由は以下の3つです。

  •  任意整理ではあまり効果がない
  •  個人再生は残債が減額されるが減額分は連帯保証人が請求される
  •  自己破産は残債が無くなるが残債全額を連帯保証人が請求される

それぞれについて説明していきます。

任意整理ではあまり効果がない

任意整理は借り入れ先と交渉をして借金の減額や利息をなくすなど、負担を軽くし返済できるようにする手続きです。そのため利率が低い奨学金は任意整理をしても負担はあまり変わりません。

さらに借り入れ先が銀行ではなく独立行政法人日本学生支援機構や大学、地方自治体などが多いため、交渉しても譲歩してくれる可能性は低いです。したがって、奨学金の債務整理に任意整理は向いていません。

ちなみに、奨学金の利率は「利率固定方式」と「利率見直し方式」、「貸与が終了した年月」によって違います。例えば貸与の終了が2020年3月の場合、「利率固定方式」は0.070%、「利率見直し方式」は0.002%です。

上記の利率で400万円を借りた場合を想定して計算してみます。
前提条件は利率固定方式で利率が0.070%、借入金額400万円、返還期間が20年(240回)です。(元利均等方式)
利息:29,430円
返還総額:4,029,430円

利率が低いため利息は29,430円しか掛かっていません。したがって任意整理で利息をカットしてもらっても、効果が薄いことが見受けられます。

奨学金以外の債務がある場合は任意整理も有効

奨学金以外の返済負担が減れば、奨学金の返済が出来る場合は任意整理をおすすめします。例えばカードローンや消費者金融の借入れによって生活が圧迫されている場合です。

カードローンや消費者金融の場合、金利相場は4.5%〜18%と高いため任意整理の効果を期待出来ます。したがって任意整理をすることで、返済負担を大きく減らすことが可能です。

ちなみに、この方法なら奨学金はしっかりと返済するため、連帯保証人や保証人に迷惑を掛ける心配もありません。そのため安心して利用することができます。

個人再生は残債が減額されるが減額分は連帯保証人が請求される

個人再生を行うと奨学金の残債が8〜9割減額されます。ただし奨学金は連帯保証人や保証人を設定していることがほとんどのため、個人再生を行うと減額分を連帯保証人や保証人が一括返済を求められてしまいます。

連帯保証人や保証人に迷惑を掛けてもいいと思うなら話は別です。しかし連帯保証人は両親、保証人は親戚がなっていることが多いため、そういった方は滅多にいないと思います。

そのため、個人再生はおすすめできません。
それでも個人再生をしなければどうにもならないというケースでは、トラブルを回避するためにも連帯保証人と保証人に相談してから検討するようにしてください。

自己破産は残債が無くなるが残債全額を連帯保証人が請求される

自己破産をすると奨学金の残債を全て無くすことが可能です。ただし奨学金の残債全額を連帯保証人や保証人が一括返済を求められてしまいます。
例えば奨学金が600万円残っている状態で自己破産した場合には、連帯保証人が600万円全額を一括返済しなければならなくなります。

そのため、自己破産を行う前に連帯保証人や保証人とよく話し合うことが重要です。

誰も返済できない場合は連帯保証人・保証人も債務整理が必要になる

奨学金を債務整理して請求された残債または減額分を連帯保証人が一括返済できない場合は、連帯保証人も債務者同様に債務整理が必要です。そして連帯保証人が債務整理をした場合には、保証人に対して連帯保証人と同様の請求がされます。

この際、保証人が支払う必要がある金額は「分別の利益」によって残債の半分です。しかし債権者が残債全額や減額分の一括返済を求めてくることは珍しくないため、請求された時は債権者に「分別の利益」を主張するようにしてください。ちなみに返済額が半分になっても支払えない場合には、保証人も債務整理をする必要があります。

分別の利益分別の利益とは、保証人が複数いる場合に保証人の数で返済金額を按分することです。例えば保証人が2人の場合に500万円借りていた場合は保証人の負担はそれぞれ250万円になります。

機関保証を利用している場合は保証機関が代わりに返済してくれる

機関保証は連帯保証人や保証人の死亡や破産などによって保証人を変更する必要があるケースや連帯保証人や保証人が得られない場合に利用できる制度です。この機関保証を利用している場合に自己破産や個人再生を行うと、保証機関が代位弁済してくれます。

そのため機関保証を利用している場合は、債務整理をしても保証会社以外には迷惑をかけることはありません。
ただし機関保証を利用するには、毎月保証料がかかります。

日本学生支援機構の奨学金で機関保証を利用する場合の保証料については下記のサイトを参考にしてください。

参考:機関保証の保証料金

代位弁済代位弁済とは、保証会社や親族などの第三者が借金した人の代わりに債権者に返済することを指します。

奨学金の債務整理を検討するなら法律事務所への相談がおすすめ

奨学金を滞納してしまい債務整理を検討しているなら法律事務所や弁護士に相談するのがおすすめです。奨学金を債務整理する以外の方法を提案してくれたり、債務整理をするにしても連帯保証人などへの負担が少ない方法を考えてくれます。

また債務整理の手続きは複雑なため、自分の手でやるのは不可能なことも理由のひとつです。一人で悩んでいても解決できないため、法律事務所に相談してみてください。事務所によっては無料相談をしているケースもあるので、まずは気軽に相談することをおすすめします。

債務整理以外の解決方法

日本学生支援機構で借りた奨学金の支払いを滞納しそうな場合、次の方法を利用することで債務整理をしなくても解決できる可能性があります。
その方法は以下の4つです。

  •  一時的に返済が苦しい場合は返還期限猶予制度を利用する
  •  傷病や経済的理由で返済が困難な場合は減額返還制度を利用する
  •  障害や死亡により返還が困難になった場合は返還免除制度を利用する
  • 返還者と連帯保証人に責任がない理由による延滞は延滞金減免制度を利用する

それぞれについて説明します。

一時的に返済が苦しい場合は返還期限猶予制度を利用する

失業などで一時的に奨学金の返済が苦しくなった際におすすめするのが、返還期限猶予制度です。返還期限猶予制度を利用することで、返還を猶予してもらうことができます。

返還猶予期間は通算で最大10年です。ただし理由次第では、10年以上でも返済の猶予が延期される場合もあります。

また返還期限猶予制度を利用するためには、下記の条件を満たしたうえで審査を受けなければいけません。審査を通過した後も毎年申請が必要になるので、忘れないようにしてください。

理由 収入の条件
給与所得者年収(税込) 給与所得者以外の年間所得(控除後)
経済困難 300万円以下 200万円以下
傷病(無職)
傷病(就労・休職) 200万円以下 130万円以下
生活保護
失業中
新卒等(卒業・退学の翌年6月までに申請) 300万円以下 200万円以下
産前産後休業・育児休業 300万円以下 200万円以下
災害(1年以内)
災害(1年以上) 300万円以下 200万円以下

一時的に奨学金の返済が困難な場合には返還期限猶予制度を利用するようにしてください。ただし返済が先送りにされるだけで、返還すべき元金や利子は免除されないので注意が必要です。

参考:返還期限猶予制度の概要

傷病や経済的理由で返済が困難な場合は減額返還制度を利用する

傷病や経済的理由で返済が困難な場合におすすめするのが、減額返還制度です。

返還減額制度を利用することで、災害や傷病、その他経済的理由により奨学金の返還が困難な人が返済額を減額できます。1回の願い出につき適用期間は12ヶ月で、最長15年(180ヶ月)の利用が可能です。延長をする場合は適用期間が終了する前に再申請が必要になるので、忘れないようにしてください。

また返還減額制度を利用するためには下記の5つの条件を満たして審査に通る必要があります。

  1. 災害や傷病、その他経済的理由により奨学金の返還が困難な人で年間収入金額が325万円以下であること(給与所得以外の所得の場合は225万円以下)
  2. 奨学金を延滞していないこと
  3.  口座振替(リレー口座)に加入していること
  4.  返還方法が月賦であること
  5.  「個人信用情報の取り扱いに関する同意書」が提出されていること

参考:減額返還制度の概要

奨学金の返還が困難で上記の条件を満たしている場合には、減額返還制度の利用を検討してください。

障害や死亡により返還が困難になった場合は返還免除制度を利用する

障害や死亡により返還が困難になった場合は返還免除制度を利用するのがおすすめです。
返還免除制度を利用することで、奨学金の返還が免除されます。ただし死亡か障害かで提出するべき書類が違うので注意が必要です。

事故などで身体障害になった場合やうつ病などの精神障害になった場合は、診断書と収入に関する証明書を提出します。一方で本人が死亡した場合は、死亡の事実が記載された戸籍抄本と貸与奨学金返還免除願の提出が必要です。それぞれ提出することで奨学金の返還が免除されます。

精神障害や身体障害、奨学金を借りた本人が死亡した場合には、返還免除制度の利用を検討してみてください。

返還免除制度の概要

返還者と連帯保証人に責任がない理由による延滞は延滞金減免制度を利用する

返還者と連帯保証人に責任がない理由による延滞は延滞金減免制度を利用可能です。ただし日本学生支援機構に認定される必要があります。

認定されるのは以下のケースに該当した場合です。該当している方は、分割返還計画書を提出することで延滞金を減免してもらえます。

  •  奨学金を借りた本人が,死亡または精神や身体の障害により返還できない状態で連帯保証人または保証人が返還するとき
  •  本人や連帯保証人、保証人からの返還が困難な状態で第三者が返還するとき
  •  本人からの返還が困難な状態にある場合で連帯保証人や保証人が最終の割賦金の返還期日の5年以上前までに返還未済額の全部を分割返還計画書に従い1年の期間内に返還するとき

延滞金減免制度の概要

延滞金を請求されて困っている方の中で日本学生支援機構に認定されるケースに該当している方は、延滞金減免制度の利用を検討してみてください。

まとめ

奨学金を個人再生や自己破産などの方法で債務整理すると、保証人や連帯保証人に返済義務が生じるため多大な迷惑がかかります。一方で任意整理では連帯保証人や保証人に迷惑はかけないものの効果が薄いです。そのため、安易に奨学金を債務整理することはおすすめできません。

債務整理を検討する前にまず返還免除制度や返還減額制度などの救済制度が利用できないかを確認してみてください。確認するためには救済制度を利用するための適応条件について知っておくことが重要です。

このためこの記事では、奨学金の債務整理がおすすめできない理由や連帯保証人や保証人への影響、奨学金の救済制度について詳しく解説してきました。奨学金の返済に悩んでいる方は、この記事を参考にしてみてください。きっと打開策が見つかるはずです。

ただしそれでもどうしても返済できない場合は、債務整理を検討する必要があります。債務整理を検討する際は、自身では難しいので法律事務所に相談することがおすすめです。

この記事を書いた人

yonezawa

法学部を卒業後、大手建築会社に勤める。その後、大手コンサルタント会社に転職。これまでの経験で培った資格や経験を元にライターとして活動。不動産・建築・法律のような専門分野を「中学生でも分かる文章で伝える」を心掛けて執筆します。