債務整理で弁護士や裁判所に嘘をつくとどうなる?免責不許可や弁護士の辞任、最悪の場合は詐欺罪で逮捕の恐れが

実は無料相談のとき、本当は収入ゼロなのに「仕事をしていて収入がある」と申告してしまいました。

債務整理の時に嘘をつくと、手続きによくない影響はありますか?

収入について嘘をつくと任意整理をした後に返済が苦しくなり、もう一度任意整理をし直す、もしくは他の債務整理が必要になる場合があります。

自己破産や個人再生で嘘をつくと、手続き自体ができなくなることもありますよ。

少しくらいのウソならバレない気もしますが、実際はどうなんですか?

弁護士や裁判所は債務問題に何度も携わっているので、少しでも不自然なことがあればすぐに気づきます。

債務整理は弁護士との信頼があって成功するものです。信頼関係を築くためにも、本当のことをお話するようにしてくださいね。

債務整理を目的に弁護士・司法書士の無料相談を利用すると、借金の状況や収入などについて質問をされます。

借金の金額や会社数を少な目に、もしくは収入を多めに申告したりするとどうなるのでしょう。

また自己破産手続きの時に財産を隠そうとしたり、個人再生の家計簿作成時に嘘を申告したりしたらどうなるのでしょうか。

債務整理の際に虚偽の内容を申告すると、手続きが進まなかったり失敗したりします。最悪の場合刑事罰に問われることもあります。

また弁護士や司法書士も人間ですので、嘘を何度もついて信頼を損ねると手続きの途中で辞任されてしまうケースもあります。

今回は債務整理の際に嘘をつくと実際にどうなるのか、事例をふまえながら詳しく解説をしていきます。

この記事でわかること
  • 任意整理の時に収入を偽ると、和解後の返済がうまくいかなくなることも
  • 自己破産・個人再生で嘘をつくと手続きが認められない恐れがある
  • 債務整理のときに嘘をつくといずれバレることになる
  • 依頼した弁護士が辞任する、最悪の場合詐欺罪等で罰せられることもあるため債務整理で嘘はつかないことが重要

債務整理において申告が必要な事柄とよくある嘘のパターン

債務整理を弁護士や司法書士に依頼する際、まずは事務所が設けている無料相談を利用するかと思います。

無料相談では債務整理が必要なのか、債務整理をするならどの手段がよいのかを判断するため、以下のような事柄を質問されます。

  • 借金の総額
  • どこから借りているか
  • 返済をしている期間
  • 借金の理由
  • 現在の収入
  • 家族構成
  • 持ち家・車など財産があるか

弁護士や司法書士というと、どうしても堅苦しいイメージを抱きがちです。

そのため債務整理をしようと思い切って相談を利用したはよいものの、

「借金の理由を言ったら、叱られてしまいそうで怖い」
「収入を言うのがはずかしい」
「こんなに借金をしていると知られたら呆れられそう」

など不安になりつい嘘をついたり、サバをよんだりする方もいます。

しかしここで大きく嘘をついてしまうと間違った手続きに進んでしまい、債務整理手続きが失敗に終わる恐れがあります。

弁護士や司法書士の質問は、債務整理を成功させるために必要な事柄です。

借金問題を解決し新しいスタートを切るためにも、必ず正直に申告を行いましょう。

ワンポイント解説

債務整理には任意整理・個人再生・自己破産の3つがあり、どれを行えば成功するか、どの方法が向いているかは債務者の状況から判断しています。
債務整理を成功させるためには必ず正確な内容を申告してください。

弁護士・司法書士と契約を結んで債務整理に取り掛かった後にも、嘘を申告したくなるシーンは存在します。

債務整理の手段ごとに実際の事例を解説していきます。

任意整理において収入や返済可能金額を偽ると事態が悪化する

任意整理とは、弁護士・司法書士が金融機関と交渉を行い、借金を減額する手続きです。

手続きが終わった後(=和解後)は、減額した借金を3年~5年ほとかけて返済していくことになります。

任意整理の手続きの概要、減額できる金額についてはこちらを参考にしてください。

債務整理の方法の中で、任意整理はデメリットが一番少ない手段です。

しかし和解後にも返済が続くことが特徴であり、返済能力がないと手続きができません。

収入の見込みがなく借金の金額が多い場合、自己破産を視野に入れることになりますが、自己破産をしたくないという気持ちから無職なのに「収入がある」「毎月○万円返済ができる」と嘘をつく方がいます。

任意整理において収入や返済可能金額を偽ると、和解後に返済に苦しむことになりますので、嘘をつくのはやめましょう。

任意整理は収入がないとできないと思われがちですが、無職でも任意整理をしている方は実際にいます。

無職=自己破産と決めつけず、自分の状況を正直に伝えて任意整理ができるかどうかを相談してみてください。

個人再生で嘘をつくと不認可になることも

個人再生とは、民事再生法に基づいて返済ができないことを裁判所に申し立てを行い、借金を5分の1~10分の1に減額してもらう手続きのことです。

個人再生の具体的な手順やメリット・デメリットについて知りたい方は以下の記事を読んでみてください。

個人再生は3つの手続きの中でも成功率が高い手続きで、2017年度に申立があった個人再生は96.77%が成功したというデータが日本弁護士連合会より発表されています。

参考:日弁連 破産事件及び個人再生事件記録調査

そのような中手続きが取消になる原因として挙げられるのは、借金の金額や裁判所に提出する家計簿で嘘をついたケースです。

ワンポイント解説

個人再生手続きでは、収入・支出をまとめた家計簿を提出し、それを元に再生計画を立てていくことになります。
ウソの内容を申告すると、認可が取り下げられる恐れがあります。

自己破産ほど厳しくはありませんが、嘘などが原因で著しく信用を損なった場合は認可が取り下げられる、または弁護士が辞任する可能性があるため注意しましょう。

自己破産での嘘は免責不許可の可能性が

自己破産は裁判所に返済不能であることを申告し、財産の大半を引き換えに借金を帳消しにする(免責してもらう)手続きです。

自己破産のデメリットや制限については以下の記事に詳しくまとめられていますので、気になる方は併せて確認してみてください。

債務者の財産の多くを差し押さえて換金し、それを金融会社に分配するため、所持している財産は細かくチェックされます。

また大掛かりな手続きですので、借金の理由によっては免責不許可破産が認められず、借金が取り消しにならないことになることもあります。

そのため3つある債務整理の手続きの中でも一番嘘をつく人が多く、それによる罰も重いことが特徴です。内容について詳しく見ていきましょう。

  • 借入理由
  • 資産
  • 持ち家
  • 借入先

借入理由

自己破産では、借金の理由がギャンブルや浪費だった場合「免責不許可事由」となり、借金の取消が認められないことがあります。

そのため出費の理由をつい偽ってしまう人がいますが、弁護士や裁判所は通帳などからお金の動きをチェックしますので、もし不審な出費があれば怪しまれます。

実際は借金の理由がギャンブルなどの免責不許可事由であっても、裁判所の裁量で破産が許されることもあり、これを裁量免責と呼びます。

ワンポイント解説

借金の理由がギャンブルなどだったとしても、裁判所の裁量で免責が許可されることがあります。
理由を隠さずに正直に伝え、気持ちを入れ替えて生活を立て直していくことを主張することが大切です。

自分が免責不許可事由に当てはまりそうな場合、破産手続きの経験な豊富な弁護士に相談し、裁量免責が受けられそうか確認することをお勧めします。

資産

破産手続きをすると、財産の多くを差押えされることになります。

手元に残せる財産を増やす目的で、破産手続き前に他の人の口座にお金を移したり、車の名義を変えたりする人は実際にいます。

しかし没収される財産を減らそうとする行為は財産隠しとみなされ、「詐欺破産罪」に問われます。

破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 債務者の財産を隠匿し、又は損壊する行為
二 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
三 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為

引用元:破産法 第二百六十五条

差押えされる財産を隠す、故意に価値を減らす、人に譲る行為は全て犯罪であり、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または両方を科されます。

少しくらいならバレないだろうと思うかもしれませんが、裁判所は財産について非常に細かくチェックをします。

また管財事件の場合は郵送物が破産管財人に全て転送され、内容をチェックされます。

郵送手続きを伴う財産の移動は確実にバレるでしょう。

ワンポイント解説

管財事件とは、裁判所によって破産管財人が選ばれ、破産者の財産の管理・処分を行う手続きのことです。
33万円以上の現金がある、20万円以上の財産がある場合は管財事件になる可能性が高く、同時廃止事件と違って財産の動きに関するチェックは厳しくなります。

自己破産をすると財産は全部取られてしまう、と考える方も多いですが、実際には手元に残せるものもあります。

例えばパソコンは一台までであれば所有を認められますし、車やバイクも生活必需品として認められれば没収されません。

以上のような財産の所持を認めてもらうためにも、財産は隠さず正直に申告するようにしましょう。

持ち家

破産手続きにおいて住宅・土地の不動産も差押え対象であり、家族が住んでいる場合は引っ越しをしなくてはいけません。

自宅を手放したくない気持ちから賃貸住まいだと偽る、または破産前に名義を家族へ変えようとする人がいますが、これは上の項目でも紹介した「詐欺破産罪」にあたります。

持ち家を隠そうとする行為は絶対にバレます。

結果として家を失うだけでなく刑事罰に問われますので絶対にやめましょう。

なお、自己破産をしても家に住み続ける手段はあります。

以下の記事に自己破産における不動産の扱い、破産後に自分の家に住む方法についてまとめられています。

借入先

自己破産の手続きでは借金が全て帳消しになりますが、それは金融機関だけでなく個人間の借金も対象です。

家族や知人から借金をしていた場合、その相手に破産を知られることを恐れ、裁判者や弁護士に借金の事実を隠す人がいます。

自己破産をしたにも関わらず特定の相手にだけ返済することを「偏頗(べんぱ)弁済」と呼び、免責不許可事由にあたります。

個人からお金を借りていて自己破産をしたい場合、

  • 金融会社と同様、債権者として手続きに参加してもらう
  • 債権放棄をしてもらう

いずれかの手段を取る必要があります。

債務整理で嘘をつくと実際にどうなる?実際の事例を解説

債務整理で嘘をつくとどのような事態を引き起こすのか、全ての手段に共通する事柄をまとめました。

債務整理でついた嘘はほぼ確実にバレる上、悪い事態しか引き起こしません。

最悪の場合は刑事罰に問われ逮捕されることになります。

債務整理の手段に関係なく、虚偽報告はやめましょう。

手続きが取消になる

債務整理の手続きの途中でウソをついたことがバレた場合、本来であればスムーズに進むはずだった手続きが失敗することがあります。

  • 任意整理…金融機関が減額に応じてくれない
  • 個人再生…再生計画が裁判所で不認可になる
  • 自己破産…裁判所で免責不許可になり、借金が帳消しにならない

債務整理が失敗に終わった場合でも、弁護士や司法書士に既に支払った着手金は原則として戻りません。もう一度債務整理をしたい場合は着手金をもう一度払う必要があります。

再度債務整理が必要になる

収入や返済可能金額を偽って任意整理をした場合、和解後の返済条件が自分に合わず、支払が滞ってしまう恐れがあります。

和解後に返済ができなくなった場合、もう一度任意整理(再和解)をし直して返済金額を減らす、または個人再生や自己破産に切り替えることになります。

その場合弁護士・司法書士への依頼費用は全て新たに払わなくてはいけません。少しの嘘が大きな負担となって圧し掛かることになるのです。

弁護士・司法書士が辞任する

弁護士や司法書士は堅苦しいイメージがありますが、借金問題に携わる専門家は依頼者の金銭問題を解決するため、親身になりながら話を聞きます。

話し相手に嘘をつかれるのは誰でも嫌なものですが、それは弁護士・司法書士も同様です。

依頼者があまりにも信頼できない場合、依頼した専門家が途中で辞任することがあります。

詐欺罪・詐欺破産罪で逮捕される恐れがある

債務整理の手段に関係なく、虚偽の報告があまりにも悪質な場合は詐欺罪に問われることがあります。

詐欺罪の成立要件は以下の4つです。

  1. 欺罔(きもう)…わざと嘘をつき、相手を騙す
  2. 錯誤…1の欺罔によって相手が騙される
  3. 処分行為…騙された相手が行為者や第三者に財産・利益を渡す
  4. 財物・利益の移転…行為者が3で渡された利益を受け取る

つまり故意に金融業者を騙し、何らかの利益を得た場合に詐欺罪が成立するということです。

具体的には以下のような例が詐欺にあたります。

  • 実際より高い年収を申告する
  • 無職であるにも関わらず収入があると偽る
  • 最初から返済の意思がないにも関わらず借金をした

詐欺罪は10年以下の懲役であり罰金刑はありませんので、もし起訴されれば確実に裁判になり、懲役刑が科されます。

また自己破産手続きの際に嘘の申告をしたり財産隠しをした場合、詐欺破産罪に問われます。

自己破産の項目でも解説をした通り、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または両方を科されます。

債務整理における嘘に関するQ&A

無料相談の段階であれば嘘をついても問題ないですか?

無料相談では借入金額や年収、相談者の状況を元に、どのような手続きが合っているかを判断します。債務整理を成功させるために、最初から正しい内容を申告してください。曖昧な部分はおおよそで問題ありません。

無料相談の時に嘘をつきました。後から本当のことを言って叱られませんか?

債務整理の実績が豊富な弁護士や司法書士は、相談者に親身になって対応しますので、嘘をついてしまった理由についてもきっと理解してくれるはずです。できるだけ早めに本当のことを伝えましょう。

途中で仕事や収入の状況が変わった時はどうすればいいですか。

債務整理はすぐに終わるものではありませんので、手続き途中で状況が変わることも珍しいことではありません。早めに担当弁護士に伝えましょう。

弁護士や司法書士、裁判所の人は、依頼者の嘘に気づくんですか?

債務整理に携わる弁護士や司法書士、裁判所は数多くの事例に向き合っていますので、様々な虚偽申告を実際に経験しています。相談者に少しでも不自然な部分、不審な部分があれば「これは嘘をついている」と気づきます。嘘は確実にバレると考えましょう。

まとめ

この記事のまとめ
  • 借金や収入について虚偽の報告をしてもいずれバレることになり、最悪の場合は刑事罰に問われる
  • 任意整理において返済可能金額や収入を偽ると返済が滞り、再度債務整理が必要になることも
  • 個人再生や自己破産は嘘をつくと手続き取消になる恐れがある
  • 債務整理で大切なのは弁護士や司法書士との信頼関係である

債務整理の際に収入や仕事、財産について嘘をついてしまう方がいますが、事実と違う内容を申告してもよいことは一切ありません。

どこかで嘘をつくと必ず矛盾や不自然な点が生じますので、確実に弁護士や裁判所にバレます。

その結果、本来ならスムーズに進むはずだった手続きが取消になったり、弁護士が辞任したり、最悪の場合刑事罰に問われることになります。

債務整理は人生に何度もない非常に重要な手続きであり、成功させるためには弁護士や司法書士との信頼関係が不可欠です。

嘘をつくと弁護士の辞任に繋がるケースもあります。

財産や収入の状況についてウソをつかないことは勿論ですが、「本当はこうしたい」という希望を相談することで、融通を利かせてもらえる事も多いです。

気負いすることなく、一緒に確実に手続きを進めていきましょう。