夫婦で同時に債務整理!メリットやリスク・同時に手続きした方が良い場合を解説

先生、夫婦でお互い同時に債務整理することはできるのでしょうか?

はい、可能です。債務整理を夫婦で同時に行なえば、一気に家計の見直しができるだけでなく、弁護士費用や裁判手続き費用が安くなることもあるんですよ。

そうなんですね!でも夫婦で同時に債務整理をしたら、2人同時にブラックリストに載るんですよね?

そうなります。住宅ローンや教育ローンを組む予定がある場合は、注意が必要です。クレジットカードが作れなくなることについては、任意整理なら債務整理した対象を任意で選べるため現在のカードを残しておくこともできますよ。

なるほど…。状況によっては債務整理の方法を検討する必要があるんですね。

そうですね。また住宅ローンがあるか、ペアローンを組んでいるか、などといった条件によっても撮るべき手段が変わります。そのため、夫婦同時に債務整理をお考えなら、弁護士に相談した方が良いでしょう。

そうですね。先生にお話を伺って良かったです!

夫婦でそれぞれ借金にお困りではありませんか?結婚前の借金を結婚後も返済し続けているケースや、住宅ローンを組んだものの状況が変わって返済に困るなどといったケースは少なくありません。

夫婦でそれぞれが借金の返済に収入を充てていると、世帯全体の貯金が難しくなります。さらに、お互いの借金返済額が家計を圧迫してしまうケースも。

このような場合は、夫婦で同時に債務整理するという手段もあります。債務整理は個人名義の債務に対する、個人の手続きなので、夫婦で別々に行なうことが可能です。

借金は支払いが難しいと感じた時点で早めに債務整理をすることをおすすめします。なぜなら返済ができなくなってからは遅延損害金などの賠償金を請求されるほか、相手から裁判を起こされることもあるからです。

相手と任意交渉のできる段階で動けば、債務整理手続きの幅も広がるでしょう。とはいえ夫婦で同時に債務整理をすると、一度に家計を見直せる一方で2人同時にブラックリストに載るというデメリットもあります。

また現在の状況やライフプランによっては夫婦同時に債務整理をしない方が良い場合も。債務整理で失敗しないためには、弁護士に相談して最適な方法を提案してもらうと良いでしょう。

この記事でわかること

  • 夫婦で同時に債務整理することはできる
  • 夫婦で同時に債務整理すれば一度に家計を見直せる上、費用が安くなることも
  • 夫婦で同時に債務整理すると2人同時にブラックリストに載る
  • そのほか家計やローンの状況に応じて取るべき手段が異なる
  • 自分たちに合った債務整理の方法を知るには弁護士に相談するのが無難

夫婦で同時に債務整理することは可能

夫婦でそれぞれが別々に債務整理を行なうことは可能です。

債務整理とは支払いや返済が経済的に難しい人に対し、債務を減免する法的手続きのこと。主に任意整理・個人再生・自己破産の3種類があります。

債務整理は、個人の名義で行なう手続きです。そのため、夫か妻が1人で債務整理をしてもお互いに何ら影響はなく、2人が別々で同時に債務整理をしても問題ありません。

また、夫婦でそれぞれの借入先が同じであったとしても、同時に債務整理することは可能です。同じ借入先に対して妻は任意整理、夫は個人再生、といったように別の債務整理手続きを取ることもできます。

なお一方が破産手続きをした場合、必ず配偶者も破産するということはありません。あくまで手続きをする個人が債務整理の対象となります。

夫婦で同時に債務整理するメリット

夫婦で同時に債務整理するメリットは、主に以下の2点です。

  • 世帯単位の経済状況を根本的に立て直せる
  • 弁護士費用が安くなるケースがある

特に夫婦で同時に債務整理することで、世帯の経済状況を見直せるというメリットは大きいものです。どちらか一方が債務整理をしても、一方が返済に困っていては中々家計に余裕が生まれません。

一度借金をリセットし、1つの世帯として無理のない返済計画を立てるという意味で、夫婦同時の債務整理は有意義なものといえるでしょう。

家計の経済状況を根本的に立て直せる

夫婦で同時に債務整理をすれば、経済状況を根本的に立て直せます。これは共働きの場合もどちらか一方に収入がある場合にもいえることです。

夫か妻のどちらか一方が債務整理をしただけでは、片方の借金返済により家計が圧迫される可能性があります。またどちらの借金も返済が難しいものなら、まとめて債務整理した方が将来的にも余裕が生まれるでしょう。

夫婦同時に債務整理すれば、家計全体にとって負担のない状況を作れます。

弁護士費用が安くなるケースがある

債務整理の代理人を夫婦で共通の弁護士に依頼する場合、費用が安くなるケースがあります。通常、弁護士事務所の費用体系は1人あたりの基本料金が決まっているものです。

しかし、夫婦で同時に依頼する場合は純粋に2人分の料金ではなく、1人の料金に「○円加算」といった形が取られるケースも。つまり2人別々に依頼するより割安になるということです。

また裁判所においても、2人同時に手続きすると安くなる場合があります。裁判所によって必要手数料は異なり、通常は申立人数によって純増します。しかし、一部の裁判所では夫婦で同時に手続きすると1人分の手数料で済むところも。

もちろん弁護士費用も裁判手数料も、必ず安くなるとは限りません。しかし、いずれどちらも行なう手続きなら、まとめて行なった方が手間も時間もかからずに済むでしょう。

夫婦で同時に債務整理すると双方がブラックリストに載る

夫婦で同時に債務整理すると、2人が同時にブラックリストに載ってしまうというデメリットがあります。

ブラックリストとは金融機関やカード会社が参照する個人の信用情報履歴のこと。債務整理をすると、事故として一定期間ブラックリストに掲載された状態になります。

ブラックリストに掲載されると、新たな借り入れやカードの作成において審査が通りにくくなるというデメリットがあります。ただし、ブラックリストへの掲載期間は無期限ではありません。

債務整理の手段によって、5年から10年とブラックリストへの掲載期間が異なります。この期間を超えればブラックリスト状態は解消され、新たな借り入れやカードの作成も問題なくできるようになります。

夫婦で同時に債務整理した方が良いかどうかは状況により異なる

夫婦で同時に債務整理するには、メリットもデメリットもあります。そのため、一概に「絶対に夫婦で同時に債務整理した方が良い」とはいえません。

家計の状況によって、夫婦で同時に債務整理すべきかどうかは異なります。

夫婦同時に債務整理した方が良いケース

夫婦で同時に債務整理した方が良いのは、以下のようなケースです。

  • 夫婦ともに借金が消費者金融やカード会社からのものである場合
  • 一定期間借り入れやカード作成ができなくても問題ない場合
  • 夫婦で住宅のペアローンを組んだ状態で個人再生する場合

夫婦ともに消費者金融やカード会社からの借金がある場合

消費者金融やカード会社からの借金は、比較的債務整理の対象としやすい側面があります。なぜなら、住宅ローンの債務整理で家を手放すなどといった心配がないからです。そのため、夫婦がともに消費者金融やカード会社からの借金を抱えているケースでは、夫婦が同時に債務整理を行うとよいでしょう。

なお、上記以外に住宅ローンなどの別の債務がある場合でも、任意整理の方法によれば、消費者金融やカード会社からの借金に限定して債務整理を行うことができます。

任意整理とは債務整理手続きの1つ。裁判所を介さず、相手と直接交渉をすることによって債務の将来利息を免除できる。返済期間を最大5年まで延長することも可能。

任意整理なら、債務整理の対象を自分で選択できます。そのため住宅を残したい場合は、住宅ローン以外の債務を任意整理するなどといったことも可能です。

一定期間借り入れやカード作成ができなくても問題ない場合

ブラックリストの履歴が消えるまでの間、借り入れやカード作成ができなくても問題なければ、夫婦で債務整理してもその後の生活に影響は少ないといえるでしょう。

夫婦で同時に債務整理をすると、一定期間ブラックリストに載ってしまいます。ブラックリストに載る期間の目安は以下のとおりです(信用情報機関によって異なります)。

  • 任意整理…5年
  • 個人再生…5年~10年
  • 自己破産…5年~10年

上記の期間は信用情報に傷がついている状態なので、借り入れやローンの審査に通りにくくなります。

夫婦で住宅のペアローンを組んだ状態で個人再生する場合

夫婦で住宅のペアローンを組んでおり、なおかつ個人再生を選択する場合は、夫婦どちらも同時に個人再生をした方が良い場合があります。

ペアローンとは夫婦や親子が住宅ローンを分割してそれぞれローンを組む方法のこと。 個人再生とは裁判所を通し、借金を最大10分の1まで減額できる債務整理手続きのこと。

個人再生では「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」と呼ばれる特例が適用できます。

住宅ローン特則とは個人再生手続きで、家を手元に残せる特則のこと。要件は民事再生法第198条第1項と民事再生法第196条3号により定められています。

しかし、ペアローンを組んでいると、個人再生で住宅ローン特則が認められない場合があるのです。これは住宅ローン特則において、「該当の家に住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと」という条件があるからです。

ペアローンではお互いが住宅ローンを組み、家全体をお互いの抵当権とします。つまり1つの家にお互いの抵当権が設定されており、住宅ローン特則の条件には当てはまらないのです。

しかし、夫婦で同時に個人再生すれば抵当権が実行されず、住宅ローン特則を適用して家を残せる可能性があるのです。

ただし、住宅ローン特則ができるかどうかの判断は裁判所によって異なります。

判断が難しい部分なので、ペアローンで個人再生を検討する場合は一度弁護士など法律の専門家に相談すると良いでしょう。

もちろん、どちらか一方の名義で住宅ローンを組んでいる場合なら、片方が個人再生するだけでも住宅ローン特則が適用できます。また、任意整理で住宅ローンを手続きから除く方法でも、家を手元に残せるでしょう。

 

夫婦同時に債務整理するとき注意が必要なケース

夫婦で同時に債務整理はできるものの、状況によって注意が必要なケースもあります。それは以下のような場合です。

  • 夫婦で日常的にクレジットカードを利用する場合
  • 住宅ローンを組む予定がある場合
  • 教育ローンを組む予定がある場合

上記に当てはまる人は、債務整理の方法を慎重に検討する必要しましょう。

夫婦で日常的にクレジットカードを利用する場合

夫婦で日常的にクレジットカードを使っている場合、同時に債務整理すると生活が不便になる可能性があります。

なぜなら債務整理をすると最低5年間はブラックリストに入り、新たなカード作成が難しくなるからです。夫婦同時に債務整理すると、どちらもカードを新たに作れず、既存のカードも使えなくなるかもしれません。

ただし、一定期間確実に2人ともカードが持てなくなるのは、双方が個人再生または自己破産の手段を取ったときのみです。

自己破産とは支払いや返済を全て免除する債務整理手続きのこと。債務を免除する代わりに、家や車など財産を手放し、返済に充てる必要があります。

任意整理なら債務整理の対象を任意に選べます。つまり残しておきたいカードを債務整理の対象から外すことで、債務整理以降も問題なく使える可能性があるのです。

たとえば夫が任意整理、妻は個人再生をすれば、夫のカードは残しておける可能性があります。この場合、妻はその後、夫の家族カードを使って生活することも可能です。

ただし、既存のカードを任意整理後も使い続けられるかどうかは、カードの利用契約の内容によりますので、詳しくは弁護士にご確認ください。

また、現金を持ち歩きたくない方はデビットカードを作るのもおすすめです。デビットカードなら債務整理後でも作れる上にキャッシュレスで決済できます。

住宅ローンを組む予定がある場合

債務整理をしてブラックリストに載ると、住宅ローンの借り入れは難しくなります。そのため今後住宅ローンを組む予定がある方は、夫婦で同時に債務整理をしない方が良いかもしれません。

夫婦どちらかが債務整理をすれば、していない方の信用情報に傷はつきません。たとえば夫名義で債務整理をして、妻名義で住宅ローンを組むということも可能です。

ただし住宅ローンを借り入れる際には、収入の安定性や金額などの観点から、支払い能力を総合的に審査されます。そのためブラックリストに載っていないとはいえ借金があれば、住宅ローンが組めない可能性も大いにあります。

その場合は一度夫婦で債務整理を行ない、ブラックリストが解除されてから改めて住宅ローンを組むのが最も無難でしょう。

教育ローンを組む予定がある場合

教育ローンも住宅ローンと同様です。ブラックリストに載っていると、教育ローンの借り入れは難しくなります。

片方の名義で借りるか、ブラックリストが解除されてから借り入れをするか、選択が必要です。

また、ブラックリストに載っていると奨学金の保証人にもなれません。ブラックリスト状態が解除されれば保証人にはなれますが、子供の成長は待ってくれないものです。

このような場合には片方の親が債務整理をせずに保証人になる以外にも、以下のような方法があります。

  • 他の親族に保証人を依頼する
  • 人ではなく機関に保証を依頼する

夫婦で同時に債務整理するには慎重な判断が必要

夫婦で同時に債務整理した方が良いかどうかは、状況によって異なります。そのため、債務整理する前の慎重な判断が必要です。

家計の状況に合わせて、最もメリット・デメリットのバランスが良い方法を選びましょう。

夫婦での債務整理に悩んだら弁護士に相談するのがオススメ

夫婦で同時に債務整理をすべきか、またどの手続きを選択するのがベストなのか悩んだら、弁護士に相談しましょう。

専門的知識がない一般の人にとって、自分に合った法的手続きを選択するのは難しいものです。住宅ローンを取っても、ローンの形態によって最適な手続きが変わることもあるため、一概にどれが良いとは言い切れません。

債務整理に関する経験が豊富な弁護士に相談すれば、自分たちに最適な方法を教えてもらえるはずです。また、相談からそのまま代理人を依頼することもできます。弁護士に代理人を頼めば、難しい手続きも代行してもらえるのでスムーズにことが進むでしょう。

任意整理など、直接交渉の必要な場面でも弁護士がいれば安心です。夫婦同時に依頼すれば費用が安くケースもあるため、相談してみる価値はあるといえます。近年では相談無料の事務所も多数あるので、一度気軽な相談から始めてみることをおすすめします。

任意整理のメリットや注意点も知りたい方は、「任意整理で月返済額を約1/2に!財産を残せて家族にバレずに手続きできる」も合わせてご覧ください。

まとめ

  • 夫婦で同時に債務整理することは可能
  • 債務整理の手段もそれぞれ選べる
  • ただし夫婦で同時に債務整理するとお互いがブラックリストに載る
  • 夫婦で同時に債務整理すべきかは借金の状況によって異なる
  • 債務整理のことで困ったら弁護士に相談

夫婦で同時に債務整理をすることはできます。しかし、場合によっては夫婦で同時に債務整理すると、生活に不便が生じる場合も。

また債務整理手続きの方法は主に3種類あり、それぞれのメリットとデメリットを踏まえた上で選択しなければなりません。夫婦で債務整理するときには夫がどの手続きで妻がどの手続きを取るか、それぞれ考える必要もあるのです。

もしこうした手続きの選択に不安があれば、気軽に弁護士に相談してみましょう。専門家である弁護士なら、個々に合ったアドバイスをくれます。家計をリセットする機会を有効活用するためにも、ぜひ気軽に相談してみてはいかがでしょうか。

阿部 由羅
所属事務所
ゆら総合法律事務所
所属弁護士会
第二東京弁護士会
登録番号
54491
経歴

東京大学法学部卒業・同法科大学院修了
2016年12月 弁護士登録(69期)
2016年12月~2019年12月 西村あさひ法律事務所(不動産・金融・一般企業法務など)
2020年1月~2020年10月 外資系金融機関法務部
2020年11月 ゆら総合法律事務所 開設

弁護士登録後、西村あさひ法律事務所入所。不動産ファイナンス(流動化・REITなど)・証券化取引・金融規制等のファイナンス関連業務を専門的に取り扱う。民法改正・個人情報保護法関連・その他一般企業法務への対応多数。

同事務所退職後は、外資系金融機関法務部にて、プライベートバンキング・キャピタルマーケット・ファンド・デリバティブ取引などについてリーガル面からのサポートを担当。

弁護士業務と並行して、法律に関する解説記事を各種メディアに寄稿中。

重すぎる債務は、生活を大きく圧迫するだけでなく、精神的にも大きな負担となってしまいます。完済の見込みがつかない借金を返し続けるよりも、一度債務整理を行い、経済的にも心理的にも新たにスタートを切ってみてはいかがでしょうか。
債務整理を行う際には、債務者の方のご状況やニーズに合わせた手続きの選択や対応が必要になります。困難な状況に陥ってしまった方でも、債務の問題を解決するための糸口はきっと見つかります。円滑な債務整理を実現するために、弁護士として親身になってサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。