自己破産で郵便物の受け取り制限を受ける!「郵便物」の定義と債務者の権利について

自己破産で郵便物の受け取り制限を受ける!「郵便物」の定義と債務者の権利について

自己破産をすると郵便物の受け取りに制限がかかると聞いたのですが本当ですか?

裁判所が必要と認めたときは、破産者の郵便物を破産管財人へ転送されます。

転送されたら郵便物の中身をすべて確認されるのですよね?何か嫌だな…。転送させない方法はないのでしょうか?

転送を避ける方法はないですが、郵便物の受け取りに制限がかかるのは「管財事件」になったときのみです。あなたに財産と呼べるものがなければ、制限の心配をする必要はないでしょう。また、郵便物の確認は破産者の資産状況を確認するためです。目的外使用等はないので安心してください。

「自分宛てへ届いた郵便物が誰かに転送されて確認される」このことに抵抗を感じる方は多いでしょう。中には「プライベートな部分まで突っ込まれるのではないか?」と不安を抱えている方も多いです。

しかし、自己破産時に郵便物を転送させる目的は「破産者の資産状況を把握するため」であって、この目的以外に利用されることはありません。破産者が郵便物の制限に納得ができなければ、異議申立をすることもできます。

破産者本人のプライバシーを最低限守るための配慮もされているので、郵便物の制限についてあまり心配される必要はないでしょう。

この記事では「自己破産で郵便物の制限を受けるのは本当?」「郵便物をあまり人に見られたくない…」と不安を抱えている方に、郵便物の制限対象になる方や郵便物の制限をする目的、破産者が持つ権利についてお伝えしています。

この記事でわかること
  • 破産手続きの開始後は郵便物の受け取りに制限がかかるけど、目的外使用はないし、最低限のプライバシーは守られている
  • 転送の対象になるのは「郵便物」であって、一般的な宅配便等は対象外
  • 破産者は郵便物の転送に対して異議申立ができる。また、郵便物の制限を受ける期間は「破産手続き中」に限る

自己破産手続き開始後は郵便物の受け取りに制限がかかる

破産手続き開始決定を受けると、破産者宛てに届く郵便物は破産管財人と呼ばれる人を介して受け取ることになります。これは、破産者の財産等が郵便物によって明らかになる可能性もあるためであって、とくにやましいことがなければ問題視する必要はないでしょう。

また、郵便物の制限を受ける理由は「財産状況を把握するため(隠し財産等の発覚)」であるため、同時廃止事件のときは制限を受けません。

まずは、自己破産をすると郵便物の制限を受ける理由や根拠、制限を受ける対象者についてお伝えします。

破産者宛ての郵便は破産管財人に配達される

自己破産の申立をして破産手続き開始決定を受けると、破産者宛ての郵便物は破産管財人へ配達されます。配達された郵便物は破産管財人が開封、閲覧できるようになっているため郵便物の制限を受けることになるでしょう。

裁判所は、破産管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときは、信書の送達の事業を行う者に対し、破産者にあてた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第三項に規定する信書便物(次条及び第百十八条第五項において「郵便物等」という。)を破産管財人に配達すべき旨を嘱託することができる。

引用元:e-GOV「破産法(第81条)」

上記のように破産法では「裁判所は職務遂行のために必要があると認めるときは、郵便物の転送(制限)ができる」と明記しています。しかし、実務上は破産者の負債や財産を明らかにするため、郵便物の転送を認めるケースがほとんどです。

ワンポイント解説
郵便物の制限をする理由は破産者の負債と財産を明らかにするため

郵便物にはプライベートなものも多いため、あまり人に見られたくないと思うのは当然です。しかし、破産者の中には財産や負債を隠したまま破産手続きをする方もいます。実際に、郵便物を確認することで新たな財産や負債が発覚することも多くあるため、自己破産の郵便物制限は必要と言えるでしょう。

自己破産をすることで制限を受ける「郵便物」は、主に「信書」のことを指すため宅配便等のいわゆる「荷物」は該当しません。ただし、転送対象が「郵便及び荷物」と指定されているときは、ゆうパックやゆうメールなど「郵便局からの荷物」も転送対象になります。

郵便物
荷物(郵便局) ○(荷物も対象になったときのみ)
荷物(民間)

クロネコヤマトや佐川急便等の民間宅配業者が配達する荷物は転送の対象にはなりません。ネットショッピング等で買い物されたものまで転送の対象になるわけではないため、最低限のプライバシーは守られています。

ワンポイント解説
転送対象は破産者本人の郵便物のみ

転送の対象は破産者本人宛ての郵便物のみであって、同居家族等の郵便物は転送されません。しかし、ごくまれに同居家族の郵便物が破産管財人へ転送されることもあります。万が一、家族の郵便物が転送されたとき、破産管財人は封を開けることができません。あくまでも、破産者本人の郵便物のみ制限を受けるので安心してください。

破産管財人経由で破産者が郵便物を受け取れる

破産管財人に転送された郵便物は、確認が済んだら破産者の元へ返されます。あくまでも、破産者の財産状況等を把握する目的で利用するのみなので、回収したり処分したりすることは絶対にありません。

ただし、転送された郵便物の中に隠し財産を裏付ける書類があったときや、免責不許可事由を疑われる郵便物(パチンコ店からのDM等)があったときは、破産管財人で管理されるでしょう。

また、破産手続き開始決定の情報が官報へ掲載されることで、闇金等から借り入れの勧誘DMが届くこともあります。破産者の手元に渡ってしまうことで、詐欺やトラブルに巻き込まれる恐れのある郵便物についても、破産者の承諾を得たうえで処分することもあるでしょう。

郵便物の受け取り制限は「管財事件」になった方のみ

自己破産の手続きには大きく分けて「同時廃止事件」と「管財事件」の2種類がありますが、郵便物の受け取り制限がかかるのは「管財事件」のみです。同時廃止事件として破産手続き開始決定を受けた方は、郵便物の転送がないので安心してください。

下記に該当すると管財事件として破産手続きを開始
  • 一定以上の財産を持っている
  • 免責不許可事由に該当している(該当が疑われる)こと

なお、一定以上の財産を持っているか否かは、下記の基準をもとに判断されます(水戸地裁の場合)。

  • 33万円以上の現金がある場合
  • 20万円以上の資産がある

参考:水戸地方裁判所「同廃・管財振り分けの運用について」

上記に該当された方は管財事件として破産手続きを開始する可能性が高く、郵便物の受け取り制限を受けることになるでしょう。

破産手続き中の郵便物制限に関する破産者の権利

破産手続き中は郵便物の受け取り制限を受けますが、破産者は「転送嘱託に対する異議申立」ができる権利を有しています。また、破産手続き終了後は直ちに受け取り制限を解除しなければいけないなど、破産者を守る制度もあります。

次に、破産が郵便物制限に対して主張できる権利についてお伝えします。知っておいて損のない情報なのでぜひ参考にしてください。

破産者は郵便物の転送嘱託に対する異議申立ができる

破産法では「裁判所が必要と認めるときは、郵便物の転送ができる」と記されていますが、破産者本人が納得できないときは異議申立をしても良いです。これによって、破産者本人がなんらかの不利益を受けることはありません。

破産者本人が転送嘱託に対する異議申立てをした場合、裁判所は異議申立に基づいて破産管財人への聴取等をしたうえで、転送嘱託の当否について判断します。

郵便物の受け取り制限は「破産手続き中」のみ

郵便物の受け取り制限をできるのは「破産手続き中」に限られています。破産手続きが終結したときは直ちに、郵便物転送嘱託の取り消しをしなければいけません。

ただ、裁判所によっては破産手続きの終結を待つ前に「第1回債権者集会」をもって、郵便物の転送を終了することもあります。

まとめ

今回は、自己破産によって郵便物の受け取りに制限はかかるのか?についてお伝えしました。自己破産はその性質上、破産者の財産や負債のすべてを把握する必要があるため、郵便物の転送が必要と判断されたときは制限を受けるとのことでした。

ただ、財産や負債の確認以外で利用されることはなく、破産手続きには関係ないものであれば確認されることもありません。最低限のプライバシーは守られているので、深くまで心配される必要はないでしょう。

どうしても郵便物の転送に納得ができないときは、裁判所に対して異議申立をすることもできます。異議申立をしたからといって「破産管財人や裁判所に非協力的だ」と判断されることはありません。

「郵便物の転送でプライベートまで晒さなければいけない」などと、不安に思う心配はありません。必要最低限の範囲内で利用されるのみなので、安心して自己破産をされてみてはどうでしょうか。

阿部 由羅
監修者

重すぎる債務は、生活を大きく圧迫するだけでなく、精神的にも大きな負担となってしまいます。完済の見込みがつかない借金を返し続けるよりも、一度債務整理を行い、経済的にも心理的にも新たにスタートを切ってみてはいかがでしょうか。
債務整理を行う際には、債務者の方のご状況やニーズに合わせた手続きの選択や対応が必要になります。困難な状況に陥ってしまった方でも、債務の問題を解決するための糸口はきっと見つかります。円滑な債務整理を実現するために、弁護士として親身になってサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

自己破産の関連記事