子供の通帳にある貯金も自己破産で処分の対象になる!?差し押さえ対象になり得る事由を紹介

子供の通帳にある貯金も自己破産で処分の対象になる!?差し押さえ対象になり得る事由を紹介

私が自己破産をすることで子供の貯金を差し押さえられたり、子供の通帳提出を求められたりすることはあるのでしょうか?

基本的な考え方として、自己破産は「個人」の問題であるため子供の貯金や通帳確認を行うことはありません。ただし、処分対象となる財産は単に「名義」のみで判断されるわけではないため、場合によっては子供の貯金や子供の通帳提出を求められることがあります。

子供が一生懸命貯めたお金なので、私のせいで貯金を失ってしまうのはとても申し訳ないです。どうにかできないのでしょうか?

子供名義の口座に入っているお金でも「実質的所有者」が破産者であれば、処分対象になる可能性は高いでしょう。しかし、子供がアルバイト等で一生懸命貯めたお金は「子供のお金」になるため処分対象になりません。安心してください。

親が自己破産をすることで子供の貯金も処分されてしまうのではないか?と思われている方も多いです。子供がお手伝いをして得たお小遣いやお年玉、はたまたアルバイトで一生懸命貯めたお金があるかもしれません。これらのお金を失ってしまうのではないか?と思えば、なかなか自己破産に踏み込めない方が多いのも当然でしょう。

自己破産という手続きはあくまでも「破産者本人の財産」にのみ帰属するため、子供の貯金を処分されたり子供の通帳提出を求められたりすることはありません。ただし、自己破産で言う「破産者本人の財産」は単に名義のみで判断されるものではなく「実質的にだれが所有しているのか?」によって判断が分かれます。

たとえば、破産者が子供の将来のために貯めたお金の実質的所有者は「破産者」と判断されるでしょう。他に、子供が親戚からもらったお年玉を貯金していたとすれば「子供のお金」と判断される可能性が高いです。このように、単に「名義」のみで判断するのではなく、原資を誰が出しているかなどによって判断が分かれます。

この記事では「子供の貯金を失いたくない」「子供の通帳は提出しなければいけないの?」と疑問を抱えている方向けの内容になっています。子供への影響を考えるとなかなか自己破産へ踏み込めないという方は、ぜひ参考にしてください。

※「子供」と一口に言っても、親から見れば何歳になっても子供ですが、この記事では生計を一にしている子供(大学生程度まで)を想定して書いています。自立している子供の通帳提出を求められることは基本的にありません。

この記事でわかること
  • 破産者と口座名義が異なれば「原則」処分の対象にならないが、実質的所有者が破産者であれば処分の対象になる
  • 学資保険等「子供のための貯金」は処分対象になる可能性が高い
  • 破産者の状況や子供の貯金状況によっては子供名義の通帳提出を求められることがある
  • 「子供の通帳は確認されないから」といって財産(預金)を移す行為は詐欺破産罪として罰金刑や懲役刑になる

自己破産によって子供の貯金も処分されてしまう?

自己破産によって処分される財産は「破産者本人の財産」に限られているため、子供の貯金は処分されません。ただし、処分の対象とならないのはあくまでも「子供の貯金」であって「子供名義の貯金」ではない点に注意してください。

まずは、処分の対象となる貯金や対象にならない貯金について詳しくお伝えします。

「口座の名義」が異なれば原則として処分の対象にはならない

銀行口座の名義が破産者以外のものであれば、原則として処分の対象にはなりません。つまり、子供名義の銀行口座にあるお金は基本的に処分対象にはならないので安心してください。

しかし、お金が破産者のものか、それとも子供のものかは、単純に名義だけで判断されるわけではないことに注意が必要です。

「実質的所有者」が破産者であれば処分の対象になり得る

自己破産によって処分される財産はあくまでも「破産者本人のモノ」に限定されています。「破産者本人のモノ」とは単に名義のみで判断されるわけではなく「実質的にだれの所有物なのか?」によって判断されます。

たとえば、子供がもらったお小遣いやお年玉を一生懸命貯めていたとすれば、立派な「子供のお金」と言えるでしょう。

しかし、親が子供の将来のために貯金していたお金については、実質的所有者は破産者本人と判断される恐れがあります。

ワンポイント解説
処分財産は名義のみで判断されない

自己破産は「破産者本人の財産のみ処分される」と言われていますが、これは単に名義のみで判断するのではなく「実質的に所有している者はだれなのか?」によって変わります。

学資保険での貯金は「契約者」がだれかによって異なる

学資保険は子供のための資金ではあるものの、破産者が掛け金を拠出していれば、実質的には「破産者の貯金」と同視できるため、処分の対象になります。掛け金を拠出している人が自分以外の人(祖父母等)になっていれば、実質的所有者が破産者ではないため処分の対象になりません。

なお、破産者が受取人となっている学資保険(学資保険に限らず生命保険全般)は、処分の対象になり得ます。これは「自己破産によって保険金請求権も破産財団破産手続きを開始すると破産者が持つすべての財産を破産管財人と呼ばれる人が管理します。破産管財人によって管理されることによって、破産者は財産を自由に処分できなくなります。これは、自己破産の公平性を保つためのものです。破産管財人に属する財産を「破産財団に属する」と言います。に属する」という判例に基づいています。

参考:裁判例検索「債務不存在確認等請求本訴,不当利得返還請求反訴事件」

たとえば、学資保険の受取人を子供に設定していて、子供が自己破産をしてしまったとき。このケースでは子供が有する「保険金請求権」を失う恐れがあります。

他にも下記のようなケースでは注意が必要です。

契約者 被保険者 受取人
父親 子供 母親

上記ケースの場合、父親もしくは母親の一方が自己破産をしてしまうと、保険契約が破産財団に属するため処分の対象になります。

そもそも自己破産で子供の通帳も提出しなければいけないの?

自己破産は「個人」のものであるため、基本的には子供の通帳を提出する必要はありません。しかし、下記に該当することがあれば提出を求められることもあるでしょう。

  • 家計の収支に子供口座を利用しているとき
  • 子供口座に多額の貯金があるとき

その他、疑わしい行為があるときは「財産を隠しているのではないか?」と疑われるため、提出を求められることがあります。財産隠しについては後述しますので、まずは上記2点について詳しく見ていきましょう。

原則、子供の通帳を提出する必要はない

原則として子供の通帳を提出する必要はありません。何度もお伝えしていますが、自己破産は「破産者個人」にのみ帰属します。自分の配偶者や子供の財産を差し押さえられたり調査されたりすることは基本的にありません。

ただし、子供の通帳を提出する必要がないからといって、財産を移して良いわけではありません。

中には「子供の通帳を見られないならお金を移しておけば、資産を守れるのではないか?」と考える方もいますが、これは立派な犯罪です。最終的に自己破産の免責許可がおりないのみならず、懲役刑や罰金刑の対象になるので絶対にやめてください。

家計の収支で子供の口座を利用していれば提出は必須

あまり考えられることではありませんが、子供名義の口座を家計の収支に利用しているときは提出が求められます。

たとえば、下記のようなケースが考えられるでしょう。

  • 祖父母等から子供口座宛ての仕送りをもらっていて、家計の生活費の足しにしている(収入)
  • 子供用口座を引き落とし口座に設定していた(支出)

自己破産はあくまでも個人の問題ですが、免責許可を決定するか否かの判断では「家計の収支」がとても大切です。また、破産手続き開始前最低2か月間の家計収支表提出を求められるため、子供名義の口座を収支の一部として利用しているようなことがあれば、通帳の提出を求められる恐れがあります。

多額の貯金があるときは提出を求められることがある

子供名義の口座に20万円以上の貯金があるときは、通帳の提出を求められる恐れがあります。これは、子供の貯金と言いつつも実質的所有者が「親」である可能性があるためです。

たとえば、小学生の子供が20万円を超える貯金を有していたときは、客観的に見て実質的所有者が破産者である可能性は高いでしょう。このことから念の為に子供の通帳提出を求めるケースがあります。

ですが高校生の子供が20万円以上の貯金を持っているとなれば、少し話は変わってきます。アルバイトもできる年齢であり、お年玉等のお小遣いをずっと貯めていれば20万円以上の貯金が貯まっていてもおかしくはありません。実際には、ケースごとによって扱いが変わると思っておけば良いでしょう。

ワンポイント解説
なぜ「20万円」なの?

なぜ「20万円」が基準になっているのか?それは「裁判所が、20万円以下の預貯金を自由財産としているから」です。自由財産とは、自己破産後も残しておける財産のことを指します。自由財産の範囲は破産法で決められていますが、裁判所の裁量により、自由財産の範囲を拡張することが認められています。20万円以下の預貯金は、債務者の生活の再建に役立つ合理的な範囲の財産として、基本的に自由財産の拡張が認められることになっているのです。

財産を隠す目的で子供の通帳に現金を移すのは禁止

自己破産をしても破産者の子供の通帳は原則として確認されないため、中には「子供の口座にお金を移しておけば財産を隠せるのではないか?」と悪いことを考える方もいます。しかしこれは「詐欺破産罪」という立派な犯罪です。

仮に「財産を隠す目的がなく、単なる贈与のつもりであった」としても、財産隠しが疑われるだけで大きな不利益を被ります。最後に「詐欺破産罪の恐ろしさ」についてお伝えします。

財産隠しは「詐欺破産罪」になる

破産者本人の財産を隠す目的で子供の通帳へお金を移す行為は、財産隠しとして免責不許可事由に当たるうえに「詐欺破産罪」として刑事罰の処罰対象になります。

「バレなければ大丈夫」と思う方もいるかもしれませんが、少なくとも破産者本人の通帳や入出金明細は確認します。明らかに不自然な出金(高額出金)や子供名義の口座に対する多額の振り込みがあればかならずバレます。

もしも財産隠しがバレて免責不許可事由に該当すれば、借金が0にならないため、そもそも自己破産をする意味がありません。また、詐欺破産罪となれば「10年以下の懲役もしくは、1,000万円以下の罰金」が科され、またはこの両方を併科されてしまう可能性があります。

「バレなければ大丈夫」と安易な考えで、子供の通帳等にお金を移してしまえば自分のみならず子供にも多大な影響を与えることでしょう。自己破産の本質を理解し、財産を隠す行為は絶対にやめてください。

破産手続き前に行うお金の移動・名義変更は要注意

「財産を隠そう」といった思いがなくても、自己破産前にお金を移動する行為はとても危険です。最悪の場合、破産者の意思に関係なく免責不許可事由に該当する恐れがあります。

実際、免責不許可事由に該当するか否かを判断するうえでは、その事実が起きるまでの過程や意思よりも「結果」を見られることが多いです。何の気なしに行った財産の移転が原因で免責許可がおりなかったり、破産手続き開始前に名義変更を行ったことによって、免責許可がおりなかったりする事例は多々あります。

もちろん、破産手続き開始前に「子供へ少額のお小遣いを渡した」などは免責不許可事由に該当する可能性は低いですが、極力疑わしい行動はしないように努めてください。

財産隠しを疑われるだけでもデメリットが発生する

財産を隠そうとする意思がなくても、財産隠しを疑われるだけで「管財事件」として扱われ、費用面で大きなデメリットを受ける恐れがあります。通常、処分すべき財産をほとんど持たない破産者であれば、同時廃止という手続きによって自己破産が行われ、裁判所へ納付する費用は数万円程度で済みます。

しかし、財産隠し等の免責不許可事由に該当する恐れがある破産者は管財事件として破産手続きを行うため、少額管財で20万円、特定管財では50万円以上の予納金が必要となります。

破産者本人は「そんなつもりはなかった」と言っても通用しないことがほとんどです。破産手続き開始前に子供の通帳にお金を移すなどの、疑わしい行為は極力避けたほうが良いでしょう。

まとめ

今回は「自己破産によって子供名義の貯金も失うのか?」「通帳の提出を求められるのか?」についてお伝えしました。

子供の貯金が処分の対象になるか否かの大きなポイントは「実質的所有者はだれなのか?」ということでした。原資を負担している人が破産者なのであれば、実質的所有者は破産者とみなされて処分対象になり得るでしょう。

子供が自分でアルバイトをして貯めたお金や親戚等から受け取ったお金を一生懸命貯めていたのであれば「子供のお金」になるため、処分の対象になりません。実際に自己破産手続きの中で「実質的所有者」を入出金明細の履歴から確認するため、子供口座の通帳の提出を求められることもあるでしょう。

通帳の提出を求められると「なにか疑われているのではないか?」と不安に思う方もいるかもしれませんが、正直に申告しなければ後々「財産隠し」を疑われ、デメリットを受けてしまうことになりかねません。財産隠しは借金が0にならないどころか最悪の場合、刑事罰の対象になります。絶対にやめてください。

これから自己破産を検討されている方の中には、実質的所有者が「破産者」と認められて子供の貯金を処分されてしまう方もいるかもしれません。「できるだけ子供の貯金は残したい」そう思うのは当然の親心でしょう。しかしそれが難しいこともあります。自己破産後にまた1から、子供のための貯金をしてあげれば良いです。まずは、借金をどう解決するか?に注力されると良いでしょう。

阿部 由羅
監修者

重すぎる債務は、生活を大きく圧迫するだけでなく、精神的にも大きな負担となってしまいます。完済の見込みがつかない借金を返し続けるよりも、一度債務整理を行い、経済的にも心理的にも新たにスタートを切ってみてはいかがでしょうか。
債務整理を行う際には、債務者の方のご状況やニーズに合わせた手続きの選択や対応が必要になります。困難な状況に陥ってしまった方でも、債務の問題を解決するための糸口はきっと見つかります。円滑な債務整理を実現するために、弁護士として親身になってサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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